骨髄異形成症候群 (MDS) 予後リスク判定、初回治療

2019-12-17

骨髄異形成症候群 myelodysplastic syndromes, Giemsa x400

 

骨髄異形成症候群の診断が確定したら、次は、治療が必要かどうか、無治療の場合の生存リスクはどの程度か、といったことを確認します。

それに基づいて骨髄異形成症候群の治療を決定していきます。

予後リスクについては、2020年12月時点で最新である改訂国際予後スコアリングシステム(IPSS-R)というものを用いますが、治療決定のためにとても重要ですので、複雑ですけれども、詳しく解説します。

低リスク骨髄異形成症候群高リスク骨髄異形成症候群では治療が全く異なります。きちんと確認して治療方針を決めていきましょう。特に高リスクの場合は同種造血幹細胞移植といった強力な治療が選択肢にあがります。

もしセカンドオピニオンや医療機関の変更を行う場合は、治療開始前が良いでしょう。時間に余裕があることが多いので、希望があれば検討してください。

本項でも、国内や国外の文献やガイドラインを参照しつつ解説していきます。

 

骨髄異形成症候群の予後リスク 改訂国際予後スコアリングシステム(IPSS-R)

IPSS-R 骨髄異形成症候群

骨髄異形成症候群の診断が確定したら、予後リスクの判定を行います。

2020年12月時点で最新の予後リスク判定は、改訂国際予後スコアリングシステム(IPSS-R)です。

予後リスク判定の基準は複数存在しますが、改訂国際予後スコアリングシステム(IPSS-R)が現時点で最も正確です。

 

もともと国際予後スコアリングシステム(IPSS)というものが1997年に報告されました(Blood. 1997 Mar 15;89(6):2079-88)。

国際研究として骨髄異形成症候群の症例約800例を解析して、血球減少・骨髄中の芽球割合・染色体異常から予後予測を行い、予後指標としてIPSSは作られました。

その後2012年に大規模国際研究の結果が出版され、骨髄異形成症候群の症例約7000例から予後指標を作成しました(Blood. 2012 Sep 20;120(12):2454-65)。この研究により完成した予後指標が改訂国際予後スコアリングシステム(IPSS-R)です。

 

改訂国際予後スコアリングシステム(IPSS-R)は、無治療の場合全生存期間もしくは急性骨髄性白血病化について予測する指標です。

現在は骨髄異形成症候群に対する様々な治療薬が登場していますので、この指標で予後を予測することは全くできません改訂国際予後スコアリングシステム(IPSS-R)を用いる目的は、治療方法の決定です。リスクが高ければより強い治療を行うといったように使用します。以下詳しく見ていきます。

 

IPSS-R 点数基準

予後リスク判定に用いる項目は、骨髄検査での染色体異常骨髄中の芽球割合血中ヘモグロビン血小板数好中球数、の5項目です。

染色体異常というのは、悪性腫瘍細胞である骨髄異形成症候群細胞が新たに獲得した遺伝情報の異常を見ています。染色体異常がない場合もあります。染色体異常が4つ以上あると予後不良とされます。

どの染色体異常がどのくらい予後に影響するかについてもある程度分かっていますので、それらをもとに染色体異常の項目の点数がつきます。

骨髄中の芽球は2%以下、5%未満、10%以下、20%未満で区切って点数がつきます。ただし芽球の割合は2%~10%までについては、計測者によってばらつきが強いことが知られていますのであまりあてにはなりません。

血液検査でのヘモグロビン濃度、血小板数、好中球数は簡単にわかります。

ヘモグロビンは8未満、8~10, 10以上といったように区切ります。血小板は10万、5万で区切ります。好中球数は800以上か800未満で分けます。

最終的に0~10点の点数がつきます。6点を超えるとリスクは”Very high”となります。1.5以下なら”Very low”といったように5段階(Very low, Low, Intermediate, High, Very high)にリスク分類されます(下図). 

IPSS-R リスク分類

無治療の場合"Very high"の予後は非常に悪く、生存期間の中央値は1年もありません。一方"Very low"の場合は無治療でも生存期間の中央値は約9年と、同じ骨髄異形成症候群という病名でも、その経過は全くリスクによって異なります(下図)。

骨髄異形成症候群 全生存率 IPSS-R別

骨髄異形成症候群の場合は、予後がリスク分類によってあまりにも異なるため、治療に関する臨床試験はリスク分類ごとに行われることが多いです。以下では、治療について解説していきます。

 

骨髄異形成症候群の治療 低リスク群の場合

骨髄異形成症候群の治療開始については、低リスク群(Very low, Low)の場合は、輸血が必要になったら急性白血病化したら好中球減少のため感染を繰り返すようになってから、となります。

いずれにも該当しない場合はまだ治療を開始する必要はありません。

診断時の骨髄異形成症候群症例の約60%は低リスク群(Very low, Low)に該当します(Blood. 2012 Sep 20;120(12):2454-65)。

 

骨髄異形成症候群による貧血に対する、赤血球造血刺激因子製剤の有効性について、ランダム化臨床試験が複数あります。

2009年に出版された、赤血球造血刺激因子製剤の使用の有無による貧血改善をみた、ランダム化臨床試験では低リスク骨髄異形成症候群症例を対象としました(Blood. 2009 Sep 17;114(12):2393-400)。

赤血球造血刺激因子製剤を使う群と使わない群で比較しました。

赤血球の奏効を認めた症例は、赤血球造血刺激因子製剤を使用した群で34%, 使用していない群で5.8%であり、統計学的にも有意に赤血球造血刺激因子製剤は貧血を改善しました(p=0.001, IWG 2000 criteria).

血中のエリスロポエチンという赤血球産生を促すサイトカインが臨床試験に参加した時に上昇していない症例で奏効は特に多くみられました。

赤血球造血刺激因子製剤を投与しても、全生存率や急性骨髄性白血病化については改善は見られませんでした。

 

2017年には持続型の赤血球造血刺激因子製剤(ダルベポエチン 商品名:ネスプ)の有効性についてのランダム化臨床試験の結果が出版されました(Leukemia. 2017 Sep;31(9):1944-1950)。

この臨床試験でも貧血のある低リスクの骨髄異形成症候群で、エリスロポエチンが500mU/mL以下の症例限定としました。ダルベポエチンを投与する群としない群(偽薬群)でランダム化して比較しました。

結果、赤血球の奏効を認めた症例は、ダルベポエチン投与群で14.7%, 投与しない群で0%であり、統計学的にも明らかに貧血を改善しました(p=0.016)。赤血球輸血が必要な割合も減少しました(下図 左:偽薬 右:ダルベポエチン)。

ダルベポエチンによる赤血球系奏効率 骨髄異形成症候群

ダルベポエチン投与による副作用もほとんどなく、偽薬群よりも有害事象が少ないという結果でした。

 

骨髄異形成症候群の中には、環状鉄芽球が多くみられるタイプ(MDS-RS)があります。

上記の赤血球造血刺激因子製剤の効果が乏しい場合や期待できない場合には、このタイプに対して、ラスパテルセプトという薬剤が貧血改善に有効であることが2020年に出版された大規模ランダム化臨床試験の結果でわかっています(N Engl J Med. 2020 Jan 9;382(2):140-151)。

この臨床試験では赤血球造血刺激因子製剤の効果が乏しい、もしくは期待できない接球輸血が必要な低リスク群のMDS-RSと診断された症例を対象にラスパテルセプトもしくは偽薬を投与し比較しています。

ラスパテルセプトの効果は明らかで、投与開始24週間以内に、8週間以上赤血球輸血が必要なくなった症例は、偽薬群で13%であったのに対して、ラスパテルセプト群では38%と大きく改善しました(下図p<0.001).

同様に投与開始24週間以内に12週間以上赤血球輸血が必要なくなった症例、投与開始48週間以内に12週間以上赤血球輸血が必要なくなった症例ともに、ラスパテルセプト群で有意な改善がみられています(下図、p<0.001)。

MDS-RS Luspatercept 輸血離脱率

 

ヘモグロビン値はラスパテルセプト群のほうが投与開始1週間の時点ですでに高くなっています(下図)。

MDS-RS Luspatercept Hb

ただし重症な疲労感がラスパテルセプト群のほうが偽薬群よりも少し多くみられています(それぞれ5%と3%)。

2020年12月時点でのラスパテルセプトは日本では承認されていません。近いうちに承認されることを期待します。

 

骨髄異形成症候群の中には、5番染色体長腕の欠失(del(5q))という染色体異常を持つ症例があります。このタイプで低リスクの骨髄異形成症候群の貧血にはレナリドミド(商品名:レブラミド)が良く奏効することがわかっています。

2011年に出版された大規模ランダム化臨床試験では、偽薬とレナリドミドの投与を比較しました(Blood. 2011 Oct 6;118(14):3765-76)。レナリドミドは1日5mgと10mgで比較しています。

結果、赤血球系の奏効率は偽薬群で5.9%、レナリドミド5mgで42.6%、レナリドミド10mgで56.1%と、統計学的にも明らかにレナリドミドにより良好な奏効が得られました (p<0.001)。全生存率は特に改善はみられませんでした。

 

5番染色体長腕の欠失(del(5q))がなくても、レナリドミドは少し奏効率は下がりますが、有効です

2016年に報告された大規模ランダム化臨床試験では、貧血のある低リスク骨髄異形成症候群を対象に偽薬とレナリドミド1日10mgを比較しました(J Clin Oncol. 2016 Sep 1;34(25):2988-96, Clin Lymphoma Myeloma Leuk. 2019 Apr;19(4):213-219.e4)。

赤血球輸血が8週間以上も必要なくなった症例が、偽薬では2.5%であったのに対して、レナリドミド群では26.9%と明らかな奏効がみられました(p<0.001). 有害事象はレナリドミド群のほうが高くみられました。

 

低リスク骨髄異形成症候群の一部の症例には、再生不良性貧血の治療で行うような「免疫抑制療法」が奏効することがあります

2011年に出版されたランダム化臨床試験では、シクロスポリンと抗胸腺細胞グロブリンの併用を行う群と、行わない群でランダム化して比較しました。

血球上昇の奏効率は、免疫抑制療法を行う群で29%、行わない群で9%と、有意に奏効しました(p=0.0156)。全生存率や急性骨髄性白血病化率は改善しませんでした。

 

以上より、赤血球輸血が必要な、エリスロポエチン濃度が500以下の骨髄異形成症候群に対しては、ダルベポエチンの投与により赤血球輸血頻度を減少させることを推奨します。

エリスロポエチン濃度が500以上もしくはダルベポエチンが無効な症例もしくは5番染色体長腕の欠失(del(5q))を持つ症例には、レナリドミドの使用により赤血球輸血頻度を減少させることを推奨します。

いずれも改善がみられない場合は、血球の改善率はあまり高くはありませんが、シクロスポリンと抗胸腺細胞グロブリンの併用を行うことを推奨します。

アメリカのNCCNガイドライン(NCCN Guidelines)でも同様の推奨となっています。

日本の2018年造血器腫瘍診療ガイドラインでも同様ですが、レナリドミドの使用は5番染色体長腕の欠失(del(5q))を持つ症例に限定して推奨しています。

 

なお、血小板輸血が必要となった骨髄異形成症候群に対して、血小板上昇を促す薬剤(ロミプロスチムなど)は血小板の奏効は見られません(Cancer. 2014 Jun 15;120(12):1838-46)。

 

低リスクの骨髄異形成症候群の生存率の改善させる薬剤については、以下で解説するようなアザシチジンなどのメチル化阻害剤を含めて、2020年12月時点では推奨できるものはありません。

低リスク骨髄異形成症候群にアザシチジンなどを使用しても生存率は改善するとは言えません(J Clin Oncol. 2002 May 15;20(10):2429-40, )。

ある程度の血球の上昇はみられますのでアメリカのNCCNガイドライン(NCCN Guidelines)では低リスクの骨髄異形成症候群でも推奨されています。

日本の2018年造血器腫瘍診療ガイドラインでは生存を改善させる目的での使用は推奨されていません。血球上昇を目的とした使用についても推奨はしていません。

 

輸血が定期的に必要になった場合、赤血球輸血の回数が増えることにより、体内に鉄が蓄積してきます。赤血球輸血1パック(2単位)に約200mgの鉄が含まれます。

蓄積した鉄は「フェリチン」として測定できます。フェリチンの上限値は男性では約300 ng/mL、女性では約200 ng/mLです。鉄が過剰になると心臓や肝臓に障害が生じる可能性があります。

いくつかの後ろ向き研究では、フェリチンが高くなった症例に対して、鉄を排泄させる薬剤を使用すると予後が改善するといわれていました。

2020年に骨髄異形成症候群(低・中間リスク、IPSS low, Intermediate-1)の症例に対する、鉄排泄薬であるデフェラシロクス(商品名:ジャドニュ)の効果について大規模ランダム化臨床試験の結果が出版されました(Ann Intern Med. 2020 Mar 24.)。

15パック以上の赤血球輸血を行い、フェリチンが2247 pmol/L (1000 ng/mL)を超えた症例に対して、ランダム化しデフェラシロクスもしくは偽薬を投与し比較しました。

その結果、心機能障害、肝機能障害、急性骨髄性白血病への移行、死亡してしまうといった問題が発生するまでの期間は、偽薬群で3.0年であったのに対して、デフェラシロクス群では3.9年と有意に約1年の延長がみられました(下図).

骨髄異形成症候群 Deferasirox vs Placebo, EFS

急性骨髄性白血病への移行や死亡率は両群ともあまり変わりませんでしたが、心機能障害肝機能障害が発生する確率は明らかに低下しました。

しかしながら、全生存期間については有意な差はみられていません(下図).

骨髄異形成症候群 Deferasirox vs Placebo, OS

血中のフェリチンは、デフェラシロクス群のほうがプラセボ群よりも明らかに低くなりました(下図)。

骨髄異形成症候群 Deferasirox vs Placebo, Ferritin

腎機能障害の発生率はデフェラシロクス群で15.9%, プラセボ群で0.9%と、およそ16倍の違いがありました。

たとえフェリチンが1000 ng/mlを超えたとしても排泄薬の全生存への寄与は確認できません。

心機能・肝機能の障害発生率を下げるために、腎機能障害発生率を大きく上げるリスクや薬剤費の負担を考えると、骨髄異形成症候群に対する鉄排泄薬は必須というわけではありません

 

2020年12月時点でのアメリカのNCCNガイドライン(NCCN Guidelines)では低リスクの骨髄異形成症候群でフェリチンが高値となった場合、鉄排泄薬の使用を推奨しています(カテゴリー2A).

日本の2018年造血器腫瘍診療ガイドラインでも低リスクの骨髄異形成症候群でフェリチンが高値となった場合、鉄排泄薬の使用を推奨しています(カテゴリー2B).

 

骨髄異形成症候群の治療 高リスク群の場合

たとえ高リスク群(Very high, High, Intermediate)の骨髄異形成症候群でも、治療開始は輸血が必要になったら急性白血病化したら好中球減少のため感染を繰り返すようになってから、となります。

いずれにも該当しない場合はまだ治療を開始する必要はありませんが、そもそも無症候性である頻度も低く、たとえ無症候性であっても期間は短いです。進行する可能性に注意してください。

診断時の骨髄異形成症候群症例の約40%が高リスク群(Very high, High, Intermediate)に該当します(Blood. 2012 Sep 20;120(12):2454-65)。

 

高リスクの骨髄異形成症候群の治療は、「同種造血幹細胞移植」「アザシチジンなどのメチル化阻害剤」が選択肢となります。

「同種造血幹細胞移植」とは、「細胞の型(HLA)」の一致するドナーから血液を造るおおもとの細胞である「造血幹細胞」を採取し、移植する治療です。兄弟姉妹一人につき、細胞の型が一致する確率は25%です。骨髄異形成症候群では「同種造血幹細胞移植」が以前より行われていました。

以下詳しくみていきます。

 

2010年に出版された、ドナーの有無による遺伝的ランダム化をもとにした大規模臨床試験では、骨髄異形成症候群症例に対して急性骨髄性白血病で行われるような寛解導入療法を最大2回まで行いました(Haematologica. 2010 Oct;95(10):1754-61)。

そのうち完全寛解に到達したのは約57%(194名)でした。その中の55歳以下の症例135名を、ドナーとして細胞の型(HLA)が一致する兄弟姉妹がいるかいないかで治療を割り振りました。

ドナーがいる症例は同種造血幹細胞移植を、ドナーがいない症例は抗がん剤治療、自家移植、またはその他のドナーからの同種移植を割り振りました。

結果、無再発生存率は、高リスクの骨髄異形成症候群症例で統計学的にも明らかに延長し、4年無再発生存率はドナーありで40%, ドナーなしで11%と大きな差がつきました(p=0.01)。低リスク骨髄異形成症候群では無再発生存率に差はありませんでした。

最も重要な全生存期間についても、高リスクの骨髄異形成症候群症例で統計学的にも明らかに延長し、4年全生存率はドナーありで45%, ドナーなしで16%でした(p=0.04)。低リスク骨髄異形成症候群では全生存期間に差はありませんでした。

なお、この臨床試験では抗がん剤治療と自家造血幹細胞移植を比較してもどちらが良いとは言えない結果でした。

 

ほぼ同時期の2009年には、同種造血幹細胞移植が適応とならない高リスクの骨髄異形成症候群を対象とした、大規模ランダム化臨床試験の結果が出版されました(Lancet Oncol. 2009 Mar;10(3):223-32)。

この臨床試験では、当時の通常の治療(強力抗がん剤化学療法、少量シタラビン療法、支持療法)アザシチジン投与をランダム化して比較しました。

アザシチジン(商品名:ビダーザ)は抗がん剤の一種ですが、骨髄異形成症候群で使用するときは、メチル化阻害薬として機能すると考えられています。

結果、全生存期間は通常の治療に比べてアザシチジン群で統計学的にも明らかに延長し、通常治療群で15か月、アザシチジン群で24.5か月と約1.6倍の延長でした (下図, p=0.0001).

高リスク骨髄異形成症候群 アザシチジン 全生存率

治療別にみていくと、強力化学療法とはあまり差はなく、少量シタラビン療法や支持療法と比較すると明らかな改善がありました。

 

そのほかメチル化阻害薬としてデシタビンという薬剤があり、高リスク骨髄異形成症候群に対する有効性が報告されています(J Clin Oncol. 2011 May 20;29(15):1987-96)。

同種造血幹細胞移植とアザシチジンなどのメチル化阻害薬を比較した大規模ランダム化臨床試験はありません。アザシチジンが根治的な治療でないことを考慮すると、適応症例であれば同種造血幹細胞移植を行ったほうがよいと考えられます。

後ろ向き研究の結果になりますが、高リスクの骨髄異形成症候群の60~70歳限定で解析した結果が2012年に出版されています(Biol Blood Marrow Transplant. 2012 Sep;18(9):1415-21)。

結果は、短期的な生存はどちらもあまり差はありませんが、治療開始後1年以降で徐々に差がひらいていきます(下図)。

骨髄異形成症候群 高リスク アザシチジン vs 同種移植

 

上記より、同種造血幹細胞移植が可能な高リスクの骨髄異形成症候群に対しては、同種造血幹細胞移植を推奨します。

同種造血幹細胞移植の適応とならない症例では、アザシチジンの投与を推奨しま

2020年12月時点でのアメリカのNCCNガイドライン(NCCN Guidelines)でも、日本の2018年造血器腫瘍診療ガイドラインでも同様の推奨となっています。

 

 

同種造血幹細胞移植の適応については、施設や担当医師により異なります.

一般的には全身の臓器状態が良好であれば可能です。年齢だけを理由に移植適応外ということはありません。また、臓器機能が少し低下している場合は、「ミニ移植」も可能です。

可能であれば、HLAの一致した兄弟姉妹がよいのですが、無理な場合は骨髄バンクでHLAがアリルレベルで8/8一致しているドナーを選択してください。アリルが一つでも異なり7/8の一致になってしまうと、明らかに全生存率が低下してしまいます(Blood. 2013 Sep 12;122(11):1974-82)。

HLAが一致していない同種移植や臍帯血移植とアザシチジンのどちらが良いかははっきりしていません。

 

更なる治療成績の上昇を目指して、アザシチジンに追加でレナリドミドやエルトロンボパグなどを投与するランダム化臨床試験がいくつも行われましたが、2020年12月時点ではアザシチジン単独投与以上の効果が得られたものはありません(Blood. 2018 Dec 20;132(25):2629-2638, Haematologica. 2019 Apr;104(4):700-709,など).

 

次項では高リスク骨髄異形成症候群の治療、治療効果判定について解説します。

 

まとめ 骨髄異形成症候群の予後リスク判定と初回治療

● 骨髄異形成症候群の診断が確定したら、予後リスクの判定を改訂国際予後スコアリングシステム(IPSS-R)に基づいて行います。

● 骨髄異形成症候群の治療は、輸血が必要になったら、急性白血病化したら、好中球減少のため感染を繰り返すようになってから、となります。いずれにも該当しない場合は治療を直ちに開始する必要はありません。

● 低リスク群(Very low, Low)の治療が必要な骨髄異形成症候群に対しては、赤血球造血刺激因子製剤、レナリドミド、免疫抑制療法などを用いた治療を行います。

● 高リスク群(Very high, High, Intermediate)の治療が必要な骨髄異形成症候群に対しては、「同種造血幹細胞移植」「アザシチジンなどのメチル化阻害剤」による治療を行います。

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NCCNガイドライン(NCCN Guidelines)

2018年造血器腫瘍診療ガイドライン

 

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