骨髄異形成症候群 (MDS) 症状・血液検査異常と診断

2019-12-10

骨髄異形成症候群 NCC 379000 Blast 0.2%

 

骨髄異形成症候群 (MDS)は、血液細胞の成熟過程の初期段階の細胞が腫瘍化しておこる造血器悪性腫瘍です。

進行は急性白血病と比較するとゆっくりですが、異常な細胞が徐々に増殖していきます。異常な細胞は正常な血液細胞とは異なり、おかしな形態(異形成)をしていることが多いとされています。

血球の成熟能力も低下し、造血の過程の途中で止まってしまっているものも多く、結果として血液検査で血球の低下がみられます(無効造血)。骨髄異形成症候群の血球は働きも悪いです。

本項では骨髄異形成症候群がどのようにして疑われ、どのようにして診断するのかについて解説します。

2020年12月時点で最新の診断基準である2016年WHO分類についても解説します。

 

骨髄異形成症候群 症状・血球数異常、受診と診断のための検査

骨髄異形成症候群(MDS)では多くの場合、症状はなく、健康診断や別の理由で採血した時に異常が指摘されます

また症状があったとしても、「疲れやすい」といったようなあまりはっきりしないものになります。

 

しかし採血の結果は明らかな異常が指摘されます

骨髄異形成症候群では、「貧血」「白血球数減少」「血小板数減少」の少なくともいずれかが指摘されます。約半数の症例では3つとも低下しています

血球数の異常のため、血液内科のある病院を受診して精査をするように言われます。できれはこの際に血液内科が有名で、同種造血幹細胞移植が可能な病院を受診することを推奨します。

 

血液内科のある病院を受診したら、再度採血を行います。このときの採血の量はびっくりするくらいかなりの本数になります

軽度の異常であればそのまま様子をみていくだけ(経過観察)となるでしょう。

多くの場合は、精査のために「骨髄検査」といって骨盤の骨の中に針を刺して血液を造っている場所である「骨髄」の一部を採取する検査を行います。骨髄液を吸引する「骨髄穿刺」と骨髄組織を採取する「骨髄生検」の両方が診断には必須です。

この骨髄検査は10分~15分くらいで終了します。

骨髄検査についての詳細は、「骨髄検査(骨髄穿刺吸引・骨髄生検)の手技の実際 痛みや安全性は?」をご覧ください。

 

受診した時には、現在使用している薬やサプリメント、いままでかかったことのある病気、飲酒習慣、職業、血のつながった家族の病気などについてもお伝えください。非常に重要です。

骨髄異形成症候群が疑われても、実際には骨髄異形成症候群ではなく別の理由で血球数異常になっている場合が頻繁にあります。原因を除去するだけで改善することもよくあります。

 

骨髄異形成症候群の診断 2016年改訂WHO分類

2016年改訂WHO分類 myeloid neoplasms

骨髄異形成症候群の診断基準は、2020年12月時点では2016年改訂WHO分類が最新です(Blood. 2016 May 19;127(20):2391-405)。このWHO分類をもちいて診断をすすめていきます。

WHO分類は定期的に改訂されており、新しい医学的な発見が取り込まれ続けています。

昔はFAB分類というものを使用していましたが、現在ではFAB分類はWHO分類に取り込まれています。FAB分類を使用して診断することはもうありません。

 

骨髄異形成症候群の診断には①血液検査での血球数低下が必須です。

赤血球数低下については、ヘモグロビン値で確認します。ヘモグロビンが10 g/dL未満であれば、低下ありです。

同様に白血球数について、好中球数で確認します。好中球数が1800 /μL未満であれば低下ありと判断します。血小板数は10万/μL未満で低下ありです。

この3つのうちいずれかを満たすことが必要です。

また、骨髄異形成症候群の診断には血液中の単球数は1000/μL未満であることが必要です。

 

骨髄異形成症候群 NCC 379000 Blast 0.2%

骨髄異形成症候群の診断には②「骨髄検査で細胞の形態異常」、「骨髄芽球の増加」、もしくは「骨髄検査で特定の染色体異常」のいずれかが必要です。

「細胞の形態異常」(上図)は、赤血球系、顆粒球系(好中球系)、血小板系の細胞のいずれかの系統に10%以上の形態異常があれば、異常ありと判断します。

「骨髄芽球の増加」は血液検査で骨髄芽球が2%以上~20%未満または、骨髄検査で骨髄芽球が5%以上~20%未満で、増加ありと判断します(下図)。血液でも骨髄でも20%を超えたら、急性骨髄性白血病の診断になります。

骨髄異形成症候群 NCC 23000 Blast 16%

もし、形態異常も骨髄芽球の増加もない場合は、「骨髄検査で特定の染色体異常」が必要になります。

 

ただし、10%以上の細胞の形態異常については、実はあまりあてになりません

2012年に報告された研究では、健常な骨髄バンクドナーの骨髄の塗抹標本120症例をベテランの血液形態専門の技師4人に別々に見せて、10%以上の細胞の形態異常の有無を調べました(Haematologica. 2012 May;97(5):723-30)。

1系統でも10%以上の形態異常が確認できた症例は、全体の46%にも及びました

2系統の異常は26%、3系統の異常は7%にみられました。

さらにベテラン同士でも形態異常の一致率は半分にも満たないという結果でした。

そして形態異常がない症例の一致率は25%程度でした。

健康なドナーでも形態異常は高頻度にみられるだけでなく、その一致率も低いこと、健常者でも形態異常なしと判断されるのは25%くらいになってしまうということ、これらから言えるのは「10%の形態異常という基準はほとんどあてにならない」ということです。

 

2013年に同様の研究の結果が発表され、「10%の形態異常という基準はほとんどあてにならない」ということが再現されてしまいました(Haematologica. 2013 Apr;98(4):568-75)。

この研究では骨髄異形成症候群と診断されている50症例の骨髄塗抹標本をベテランの血液形態専門の技師4人に別々に見せて調べました。

結果、この研究では10%どころか40%以上の形態異常についても一致率は低いことがわかりました。「形態異常」そのものがあてにならないと考えられます。

骨髄芽球数については、2%未満や10%以上などについては高い一致率がみられましたが、2%~9%では、骨髄芽球割合はあまり一致しませんでした

骨髄芽球は5%未満か、5%以上かで亜分類が変わりますが、そのどちらになるかの一致率はひくいということになります。

 

もっと困ったことに上記の形態異常は、何らかの薬剤を使用していると高頻度にみられてしまいます。

したがって骨髄異形成症候群の診断には③血球減少や血球形態異常を起こす別の原因を徹底的に除外することが必要になります。③がなければ、血球が下がっているだけで多くの人が骨髄異形成症候群と診断されてしまします。③がもっとも重要です

現在使用している薬剤飲酒習慣職業暦いままでの病気遺伝性疾患などは必ず確認します。

また、感染症を起こしているときも血球異常はよく見られます。ビタミン不足鉱物中毒でもみられます。

そして、特に何も原因がなくても、もともと血球が低い人もいます

 

骨髄検査で染色体異常が検出されても、骨髄異形成症候群とは言えません。健常人でも染色体異常は時々みられます(Blood. 2015 Jul 2;126(1):9-16)。染色体異常もあまりあてにはできません。

 

その他の血液疾患の可能性の除外と骨髄異形成症候群の亜分類

血球減少 der(1;7) Blast 1.0%

多くの血液疾患で、血球数低下や染色体異常がみられます。これらの血液疾患の可能性も徹底的に除外することが重要です。

 

急性骨髄性白血病は、骨髄芽球が20%以上あれば診断可能ですが、骨髄芽球が20%未満でも以下の染色体異常がある場合は、急性骨髄性白血病の診断となります。

 染色体転座t(8;21)

 染色体転座t(16;16)または16番染色体逆位

 染色体転座t(15;17) (この場合は急性前骨髄球性白血病)

 

急性リンパ芽球性白血病でも、血球数低下や染色体異常がみられます。リンパ芽球が増殖しているため診断が可能ですが、免疫染色やフローサイトメトリなどでリンパ芽球であることを特定することが必須です。

 

慢性骨髄単球性白血病は、白血球系の形態異常や、血球減少がみられますが、採血で単球が1000/μL以上に増加しています。骨髄異形成症候群では単球は1000未満であることが必要です。

 

再生不良性貧血は、血球数低下がみられるため、しばしば骨髄異形成症候群が疑われます。再生不良性貧血の診断には「骨髄生検」が必須です。骨髄生検で細胞密度が著しく低下します。骨髄生検を行わなければ、診断は不可能です。

 

原発性骨髄線維症でも、血球数低下がみられるため、しばしば骨髄異形成症候群が疑われます。原発性骨髄線維症の診断も「骨髄生検」が必須です。骨髄生検で線維が著しく増加しています。骨髄異形成症候群でも繊維が増えることがありますが、診断時点では鑑別可能であることがほとんどです。

 

その他骨髄増殖性疾患悪性リンパ腫などの鑑別が必要です。リンパ節腫大を伴わず骨髄だけに悪性リンパ腫細胞が集まる場合もあります。とくに悪性リンパ腫は骨髄異形成症候群と治療方法も治療奏効率も全く異なりますので注意してください。

 

 

ここまで徹底的にその他の原因の除外をおこなって初めて骨髄異形成症候群と診断します。骨髄異形成症候群が疑われても、本当に骨髄異形成症候群であることはあまり多くありません。

骨髄異形成症候群と診断したら、下図のように亜分類も確定していきます。

The 2016 revision to the World Health Organization classification 骨髄異形成症候群

MDS-SLD, MDS-MLD、MDS-EB-1、、、などといろいろありますが、血球減少の系統数、形態異常の系統数、骨髄芽球数で主に分類が決まります(Blood. 2016 May 19;127(20):2391-405)。

しかしながら、上述したように、形態異常や骨髄芽球数(2~9%)はあまりあてになりませんので、この亜分類は形式上のものとなります。参考程度です。

治療方針の決定には他の方法を使用しますが、それについては次項以降で解説します。

骨髄異形成症候群 myelodysplastic syndromes, Giemsa x400
骨髄異形成症候群 (MDS) 予後リスク判定、初回治療

続きを見る

 

まとめ 骨髄異形成症候群 症状・血液検査異常と診断

● 骨髄異形成症候群では多くの場合症状はなく、健康診断や別の理由で採血した時に異常が指摘される場合が多いです。

● 骨髄異形成症候群の診断のためには骨髄検査が必要です。WHO分類に基づいて診断していきます。

● 骨髄異形成症候群の診断には①血液検査での血球数低下、②「骨髄検査で細胞の形態異常」、「骨髄芽球の増加」、「骨髄検査で特定の染色体異常」のいずれか、③血球減少や血球形態異常を起こす別の原因を徹底的な除外が必要です。亜分類も一応行います。

参考文献

The 2016 revision to the World Health Organization classification of myeloid neoplasms and acute leukemia.
Blood. 2016 May 19;127(20):2391-405.

Assessment of dysplastic hematopoiesis: lessons from healthy bone marrow donors.
Haematologica. 2012 May;97(5):723-30.

Reproducibility of the World Health Organization 2008 criteria for myelodysplastic syndromes.
Haematologica. 2013 Apr;98(4):568-75.

Clonal hematopoiesis of indeterminate potential and its distinction from myelodysplastic syndromes.
Blood. 2015 Jul 2;126(1):9-16.

 

「骨髄異形成症候群(MDS) 診断と治療の概要」に戻る

 

© 2021 Cwiz Hematology