原発性中枢神経系リンパ腫(PCNSL) 診断と治療の概要

PCNSL HE perivascular

 

原発性中枢神経系リンパ腫(Primary Central Nervous System Lymphoma, PCNSL)中枢神経系原発悪性リンパ腫中枢神経系原発リンパ腫とも呼ばれる、悪性リンパ腫の一種です。

中枢神経系(脳や脊髄、眼を含む)だけにリンパ腫病変が発生した場合の悪性リンパ腫の病名です。

リンパ腫のタイプとしては「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)」が最も多いのですが、その他のB細胞リンパ腫・T細胞リンパ腫などもありえます。

WHO分類では「原発性中枢神経系びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(Primary DLBCL of the central nervous system)」とされますが、実際にはDLBCLだけではないため「原発性中枢神経系リンパ腫(PCNSL)」のほうが現実的な名称と言えます。

診断時は病変の部位が悪いため重症な状態であることが多いですが、抗がん剤による化学療法が年々進歩しており多くの場合で奏効が期待できます。

自家造血幹細胞移植などの治療も用いられるようになりさらに予後が改善する可能性もみえてきています。

 

本項では原発性中枢神経系リンパ腫(PCNSL)の診断と治療についての概要を説明しています。

詳細な内容については、下記の各リンク先のページをご覧ください。

原発性中枢神経系リンパ腫 症状から診断まで

原発性中枢神経系リンパ腫は、脳などの中枢神経系だけ悪性リンパ腫です。中枢神経系ではない部位にもリンパ腫病変が存在すれば原発性中枢神経系リンパ腫ではなく二次性の中枢神経系浸潤となります。

原発性中枢神経系リンパ腫の症状は、部分的な神経の症状(局所症状)(約7割)、精神症状 (約3~4割)、けいれん発作(約1割)、頭痛、集中力低下、悪心・嘔吐など(約1~3割)です。

原発性中枢神経系リンパ腫はまれな疾患です。発症する割合は1年間で百万人あたりおよそ2人です。全ての非ホジキンリンパ腫の1.5%、全ての原発性脳腫瘍の4%です。

 

神経症状や精神症状と頭部の画像検査を行って原発性中枢神経系リンパ腫を疑うことができます。

原発性中枢神経系リンパ腫の脳病変は頭部造影MRI検査で確認します。脳脊髄液腔に接していて、造影剤により増強される、壊死のない病変が特徴です。

 

症状とMRIから原発性中枢神経系リンパ腫が疑われたら早めに診断をすすめていきます。診断のためには病変組織の一部を採取する(生検する)必要があります。

広範囲の腫瘍切除を目的とした開頭術は推奨しません。定位針生検が望ましいです。生検前の副腎皮質ステロイド投与は強く推奨しません。

原発性中枢神経系リンパ腫ではリンパ腫のタイプは「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」が多いですが、低悪性度B細胞リンパ腫やT細胞リンパ腫の場合もあります。

 

原発性中枢神経系リンパ腫 全身精査と予後

生検で中枢神経系の悪性リンパ腫が確認されたら、治療開始前に全身のリンパ腫病変の精査が必要です。

中枢神経系ではない場所にリンパ腫病変が確認されれば、リンパ腫の「二次性中枢神経系浸潤」となり、治療方法が変わる可能性があります。この区別はとても重要です。

全身の病変を調べるにはPET-CT検査骨髄検査を行います。

また感染症の検査(HIVやB型肝炎など)、心臓超音波検査、Mini Mental Status Examination (MMSE)による認知機能の検査も行います。

 

原発性中枢神経系リンパ腫は以前はかなり予後不良で、治療方法がない時代は生存期間の中央値はおよそ数か月でした。その後の新規治療の登場により原発性中枢神経系リンパ腫の予後は年々改善しています。

原発性中枢神経系リンパ腫の予後指標としてよく使用されるのがIELSG予後スコアリングシステムMemorial Sloan-Ketteringがんセンター予後モデルですが、原発性中枢神経系リンパ腫の治療方法が年々進歩しているため、予後指標による生存率予測はあまり役には立ちません。

 

原発性中枢神経系リンパ腫の初回治療と治療効果判定

原発性中枢神経系リンパ腫に対する全脳放射線照射により平均生存期間は1年を超えるようになりましたが、それでもほぼ全例で2年以内に再発していました。

CHOP療法などの通常化学療法を放射線治療に追加しても放射線治療単独よりも良いとは言えませんでした。

R-MPV療法などの大量メソトレキセート療法を含む化学療法が有効とされ広く普及しました。

ただしR-MPV療法は単群試験であり比較試験ではありませんでした。

 

原発性中枢神経系リンパ腫のランダム化臨床試験では、大量メソトレキセート療法・大量シタラビン療法併用のほうが大量メソトレキセート療法単独よりも、再発や増悪なく生存している割合が明らかに良好で、全生存率も良い傾向にあったため普及していきます。

さらに大量メソトレキセート・大量シタラビン併用療法にリツキシマブとチオテパを追加する(MATRix療法)と、奏効率、無増悪生存率、全生存率のいずれも改善することがランダム化臨床試験で明らかになりました。

MATRix療法は原発性中枢神経系リンパ腫に対して最も有効な多剤併用化学療法と考えられます。

 

原発性中枢神経系リンパ腫の治療を開始したら必ず奏効しているかどうか確認します。

治療効果判定は国際基準に基づいて行います。治療効果判定のためには頭部造影MRI検査が必須です。

初回治療の最初の目標は治療終了2か月以内の時点で完全奏効(CRもしくはCRu)に到達することです。

完全奏効に到達したら定期的に頭部造影MRI検査で再発の有無を確認します。原発性中枢神経系リンパ腫は5年以上経過してから再発することはまれです。

認知機能については治療開始前と比べれば大半の症例で改善あるいは保たれている状態となりますが、一方で遅れて認知機能障害や神経毒性がみられることもわかっています(特に放射線治療を行った症例).

 

原発性中枢神経系リンパ腫 再発や難治性の治療

原発性中枢神経系リンパ腫の初回治療でも完全奏効に到達しない場合や、到達しても再発してしまう場合が残念ながら低くはありません。

再発原発性中枢神経系リンパ腫では、頭部造影MRI検査、腰椎穿刺、眼科検査、全身PET-CTと骨髄検査を再度行います。中枢神経系ではない場所に再発することがあるためです。

 

チオテパを含む大量化学療法+自家造血幹細胞移植を行うと奏効率、生存率ともに比較的高い数値となります。

大量メソトレキセートを含む化学療法を再度行うことや放射線治療を行うことも治療の選択肢となりますが、ある程度有効とはいえ根治的とはならない可能性が高いです。

 

原発性中枢神経系リンパ腫の再発もしくは難治性の症例に対する新しい治療の試みは次々と行われていますが、既存の治療を大きく上回るような薬剤はまだありません。

再発・難治性の原発性中枢神経系リンパ腫に対するテモゾロミド、ペメトレキセド、レナリドミド、イブルチニブやチラブルチニブによる治療は一部の症例には有効であるものの、全体としての効果は限定的でいまだ研究段階の治療です。

再発・難治性の原発性中枢神経系リンパ腫に対しては、可能であればチオテパを含む大量化学療法+自家造血幹細胞移植を推奨します。

再発・難治性 原発性中枢神経系悪性リンパ腫 PCNSL イブルチニブ OS PFS
原発性中枢神経系リンパ腫(PCNSL) 再発・難治性の新薬の臨床試験

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