原発性中枢神経系リンパ腫(PCNSL) 再発・難治性の治療

2021-01-09

再発 難治性 PCNSL TBC自家移植 PFS, OS

 

原発性中枢神経系リンパ腫(中枢神経系原発悪性リンパ腫, PCNSL)の初回治療でも完全奏効に到達しない場合や、到達しても再発してしまう場合が残念ながら低くはありません。

そのような症例(再発・難治性の症例)に対してどのような治療方法があるのか、どの治療がよいのかについて解説します。

当サイトでは自家造血幹細胞移植を推奨します(初回治療で自家造血幹細胞移植を行っていない場合)。放射線治療、化学療法、新薬なども治療の選択肢となります。

以下、ガイドラインや医学文献を参照にしながら解説していきます。

 

原発性中枢神経系リンパ腫の初回治療については「原発性中枢神経系リンパ腫(PCNSL)の初回治療 放射線治療とR-MPV療法の登場」「原発性中枢神経系リンパ腫(PCNSL)の初回治療 R-MPV療法をこえて」「原発性中枢神経系リンパ腫(PCNSL)のMATRix療法・R-MA療法の実際の注意点」をご覧ください。

 

原発性中枢神経系リンパ腫 再発・難治性の治療の選択肢と推奨

原発性中枢神経系リンパ腫(中枢神経系原発悪性リンパ腫, PCNSL)の初回治療で完全奏効(CRもしくはCRu)に到達しなかった場合は、難治性原発性中枢神経系リンパ腫といいます。

完全奏効(CR, CRu)に到達してから、リンパ腫病変が新たに出現した場合は、再発原発性中枢神経系リンパ腫といいます。

 

難治性でも再発でも治療が必要になりますが、初回治療と同じ治療を行っても多くの場合は初回治療よりも効果は低下します。

初回治療がききにくいタイプの腫瘍が増殖しているためです。

 

再発の場合は、頭部造影MRI検査腰椎穿刺眼科検査を再度行うだけでなく、可能であれば全身PET-CT骨髄検査を行うことが重要です。

再発原発性中枢神経系リンパ腫の7~10%で、中枢神経系ではない場所に再発するためです。

 

2020年12月時点で難治性あるいは再発の原発性中枢神経系リンパ腫の症例を対象としたランダム化臨床試験は出版されていません。

難治性あるいは再発症例の治療方法の選択肢は以下です.

  • 自家造血幹細胞移植
  • 放射線治療(初回治療で行っていない場合)
  • 初回治療あるいはそれと類似の化学療法を再度行う
  • 新薬を用いる(治験含む)

この中で最も奏効率・長期生存率が高いのは自家造血幹細胞移植と考えられます。

ただしこれらの治療はランダム化試験で比較されたわけではありませんので、本当に自家造血幹細胞移植がよいかは確定していません。

比較ではない前向き臨床試験の結果からは、自家造血幹細胞移植でなければ長期的な効果を得ることは難しいのではないかと考えられます。

 

2020年12月時点でのアメリカのNCCNガイドラインでは、これらの治療のうちどれが良いかについては特に推奨はありません

 

2019年度版脳腫瘍診療ガイドラインでは、「大量メトトレキサート(HD-MTX)療法を含む初期治療により長期間の奏効が得られた患者では,HD-MTX療法を含む治療を試みてもよい」、「初回治療で全脳照射を行っていない場合,もしくは追加照射が可能な場合には再発時に全脳照射を行ってもよい」とされています。

 

以下、それぞれの治療について臨床試験の結果についての医学論文を参照に解説していきます。

 

再発・難治性の原発性中枢神経系リンパ腫に対する自家造血幹細胞移植

原発性中枢神経系リンパ腫に対する自家造血幹細胞移植については2000年ごろから徐々に行われるようになってきています。

自家造血幹細胞移植とは、あらかじめ自分の造血幹細胞を採取し凍結保存しておき、通常は投与できないような大量の抗がん剤化学療法を行い、凍結していた自分の造血幹細胞を解凍して体内に戻し血球の回復を促すという治療方法です。

自分の造血幹細胞自体は血球の回復用であり、治療効果は主に大量の抗がん剤化学療法にあります。

 

2020年12月時点でアメリカでは初回治療に組み込まれることが増えています。

たとえばR-MPV療法などで初回治療を行った際に、放射線を避けて追加化学療法か自家造血幹細胞移植で地固め療法を初回治療の一環として行うなどです。

ただし初回治療の一環で自家造血幹細胞移植を行ったほうが、生存率が改善するかどうかについてははっきりしてはいません。

一方、日本では初回治療で自家造血幹細胞移植を行うことはまれです。

 

2001年に難治性あるいは再発の原発性中枢神経系リンパ腫の症例を対象とした臨床試験の結果が出版されました(J Clin Oncol. 2001 Feb 1;19(3):742-9).

エトポシドと大量シタラビンによる化学療法を2サイクル行い、部分奏効(PR)を達成したら、チオテパ・ブスルファン・シクロホスファミドによる大量化学療法と自家造血幹細胞移植を行いました。

全症例のうち、部分奏効以上を達成した症例は82%、完全奏効を達成した症例は73%でした。

3年全生存率は63.7%でした。

 

この治療成績は難治性・再発の原発性中枢神経系リンパ腫としてはかなり良好です。

ただし比較試験ではないため他の治療方法よりも良いかどうかははっきりしません。

全身状態の良い症例が多かった可能性もあります。

 

 

2008年に同様の治療の多施設前向き研究の結果が出版されました(J Clin Oncol. 2008 May 20;26(15):2512-8).

この臨床試験では、エトポシドと大量シタラビンによる化学療法で部分奏効に到達しなかった症例も、自家造血幹細胞移植を行いました。

チオテパ・ブスルファン・シクロホスファミドによる大量化学療法と自家造血幹細胞移植を行った症例はすべて完全奏効(CR)を達成しました。

全症例の無増悪生存期間の中央値は11.6か月、全生存期間の中央値は18.3か月でした(下図 左:無増悪生存 右:全生存)。

再発 難治性 PCNSL TBC自家移植 PFS, OS

実際に自家移植まで行った症例に限定すると、無増悪生存期間の中央値は41.1か月、全生存期間の中央値は58.6か月でした。

チオテパ・ブスルファン・シクロホスファミドを用いた自家造血幹細胞移植はかなり有効であると思われます。たとえ難治性であったとしても奏効すると考えられます。

 

 

2017年には別のグループから、難治性あるいは再発の原発性中枢神経系リンパ腫の症例を対象とした自家造血幹細胞移植の前向き臨床試験の結果が報告されています(Leukemia. 2017 Dec;31(12):2623-2629).

この臨床試験では、リツキシマブ・大量シタラビン・チオテパによる化学療法を行い、その後リツキシマブ・カルムスチン・チオテパによる大量化学療法・自家造血幹細胞移植を行いました。

全症例のうち、部分奏効以上を達成したのは71.7%、完全奏効に到達したのは56.4%でした。

2年での無増悪生存率は46%, 全生存率は56.4%でした。

 

難治性あるいは再発の原発性中枢神経系リンパ腫に対して、チオテパを含む大量化学療法の後に自家造血幹細胞移植を行うと奏効率、生存率ともに比較的高い数値となります。

おそらく唯一の長期生存が見込まれる治療方法です。

チオテパを含む大量化学療法の中では、TBC(チオテパ・ブスルファン・シクロホスファミド)がおそらくよいでしょう。

 

再発・難治性の原発性中枢神経系リンパ腫に対する放射線治療、化学療法

難治性あるいは再発の原発性中枢神経系リンパ腫に対して、大量メソトレキセートを含む化学療法を再度行うことや放射線治療を行うことも治療の選択肢となります。

ただしこれらはある程度の有効性はあるもののほとんどの場合で根治的な治療とはなりません

 

たとえば2005年に前向き臨床試験の結果がでています(J Clin Oncol. 2005 Mar 1;23(7):1507-13).

大量メソトレキセート療法を行った後に、再発もしくは難治性であった原発性中枢神経系リンパ腫の症例を対象に全脳放射線照射の効果をみました。

部分奏効以上を達成した症例は74%、完全奏効に到達した症例は37%でした。

無増悪生存期間の中央値は9.7か月、全生存期間の中央値は10.9か月でした(下図).

再発 難治性 PCNSL 全脳放射線照射 PFS, OS

放射線治療を行っていない症例では、難治性あるいは再発のときに放射線治療を行うとある程度の効果が得られます。ただし放射線治療は神経毒性も伴います。

 

再発時の大量メソトレキセート療法の再投与については、2014年に後ろ向き研究の結果がアメリカの医療施設(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center)より報告されています(J Neurooncol. 2014 Mar;117(1):161-5).

初回治療で大量メソトレキセート療法に奏効したが再発してしまった症例を対象に、大量メソトレキセート療法の再投与を行った症例を解析しました。

部分奏効以上を達成した症例は85%, 完全奏効に到達した症例は75%でした。

初回治療から再発までの期間の中央値は26か月でしたが、大量メソトレキセート療法再投与からの無増悪生存期間の中央値は16か月でした。全生存期間の中央値は41か月でした(下図 左:無増悪生存 右:全生存).

再発PCNSL 大量メソトレキセート療法再投与 PFS, OS

難治性の症例は含まれていないため数値そのものはよくなりますが、初回治療よりも効果は低下しています。

大量メソトレキセート療法を初回治療で行い奏効した症例は、再発時に大量メソトレキセート療法を再度行ってもある程度の効果が得られます。ただし一般的には初回治療よりも無増悪生存期間は短くなります。

 

 

難治性あるいは再発の原発性中枢神経系リンパ腫に対する、放射線治療大量メソトレキセートを含む化学療法の再投与はある程度有効ですが根治的とはならない可能性が高いため、可能であれば自家造血幹細胞移植を行うほうがよいでしょう

 

日本特有の注意点として、チオテパ(商品名:リサイオ)の承認が「特定の薬剤との組み合わせ限定」での自家造血幹細胞移植用となっていることです。

上記のTBCによる大量化学療法・自家造血幹細胞移植とチオテパの投与量自体も異なります。

可能であればTBCを推奨しますが、施設によってはTBCができない場合があります。

 

難治性あるいは再発の原発性中枢神経系リンパ腫に対する新薬については、次項で解説します。

再発・難治性 原発性中枢神経系悪性リンパ腫 PCNSL イブルチニブ OS PFS
原発性中枢神経系リンパ腫(PCNSL) 再発・難治性の新薬の臨床試験

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まとめ 原発性中枢神経系リンパ腫 再発・難治性の治療

● 再発原発性中枢神経系リンパ腫では、頭部造影MRI検査、腰椎穿刺、眼科検査、全身PET-CTと骨髄検査を再度行います。中枢神経系ではない場所に再発することがあるためです。難治性あるいは再発の原発性中枢神経系リンパ腫に対する治療の選択肢は、自家造血幹細胞移植、放射線治療、化学療法、新薬があります。

● チオテパを含む大量化学療法の後に自家造血幹細胞移植を行うと奏効率、生存率ともに比較的高い数値となります。チオテパを含む大量化学療法の中では、TBC(チオテパ・ブスルファン・シクロホスファミド)がおそらくよいです。

大量メソトレキセートを含む化学療法を再度行うことや放射線治療を行うことも治療の選択肢となりますが、難治性あるいは再発の症例では放射線治療や大量メソトレキセートを含む化学療法の再投与はある程度有効ですが根治的とはならない可能性が高いです。

参考文献

C Soussain, F Suzan, K Hoang-Xuan, et al.
Results of intensive chemotherapy followed by hematopoietic stem-cell rescue in 22 patients with refractory or recurrent primary CNS lymphoma or intraocular lymphoma
J Clin Oncol. 2001 Feb 1;19(3):742-9.

Carole Soussain, Khê Hoang-Xuan, Luc Taillandier, et al.
Intensive chemotherapy followed by hematopoietic stem-cell rescue for refractory and recurrent primary CNS and intraocular lymphoma: Société Française de Greffe de Moëlle Osseuse-Thérapie Cellulaire
J Clin Oncol. 2008 May 20;26(15):2512-8.

B Kasenda, G Ihorst, R Schroers, et al.
High-dose chemotherapy with autologous haematopoietic stem cell support for relapsed or refractory primary CNS lymphoma: a prospective multicentre trial by the German Cooperative PCNSL study group
Leukemia. 2017 Dec;31(12):2623-2629.

Paul L Nguyen, Arnab Chakravarti, Dianne M Finkelstein, et al.
Results of whole-brain radiation as salvage of methotrexate failure for immunocompetent patients with primary CNS lymphoma
J Clin Oncol. 2005 Mar 1;23(7):1507-13.

Elena Pentsova, Lisa M Deangelis, Antonio Omuro.
Methotrexate re-challenge for recurrent primary central nervous system lymphoma
J Neurooncol. 2014 Mar;117(1):161-5.

NCCNガイドライン

2019年度版脳腫瘍診療ガイドライン

 

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