フィラデルフィア染色体陰性の急性リンパ芽球性白血病の初回化学療法

2020-05-26

B-ALL Smear, Giemsa x400 2

 

急性リンパ芽球性白血病(ALL)もしくはリンパ芽球性リンパ腫(LBL)の診断や検査結果がでたら、抗がん剤を用いた化学療法を行います。

本項ではフィラデルフィア染色体陰性の症例の初回化学療法について解説します。フィラデルフィア染色体陽性の場合については「フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ芽球性白血病の初回化学療法」をご覧ください。

フィラデルフィア染色体陰性の急性リンパ芽球性白血病に対する大規模ランダム化臨床試験はあまり多くありません。最新の治療を理解するためには治療方法の発展の経緯をある程度知る必要があります。

以下に過去の治療の発展をふまえながら最新の化学療法やどのような初回化学療法がよいのかということについて記載しています。

本項でも国外の文献やガイドライン、国内のガイドラインを参照にしつつ解説していきます。

治療の実際の投与と注意点については「急性リンパ芽球性白血病(ALL)に対するR-Hyper-CVAD療法の実際と注意点」「急性リンパ芽球性白血病に対するGRAALL-2005療法の実際と注意点(前半)」「急性リンパ芽球性白血病に対するGRAALL-2005療法の実際と注意点(後半)」をご覧ください。

 

急性リンパ芽球性白血病に対する多剤併用化学療法

急性リンパ芽球性白血病/リンパ芽球性リンパ腫の治療は抗がん剤を複数組み合わせて使用する「多剤併用化学療法」が主要な治療方法となっています。

特にアントラサイクリン系抗腫瘍薬が有効であることがかなり以前からわかっています。

 

1984年に結果が出版されたランダム化臨床試験では、20歳以上の急性リンパ芽球性白血病症例に対して副腎皮質ステロイドビンクリスチンアスパラギナーゼに、アントラサイクリン系薬剤であるダウノルビシンを追加するか追加しないかでランダム化して比較しました(Blood. 1984 Jul;64(1):267-74)。

その結果、完全寛解率はダウノルビシンを追加しない群で47%でしたが、ダウノルビシンを追加した群では83%と、ダウノルビシンの追加により統計学的にも明らかに大きく上昇しました(p=0.003)。

当時の生存期間の中央値はダウノルビシンを追加しない群で15.4か月、ダウノルビシンを追加した群で20.2か月でした。

 

それ以降、悪性リンパ腫の治療と類似したアントラサイクリン系を中心とする多剤併用化学療法L-アスパラギナーゼが主な治療方法となります。

L-アスパラギナーゼは小児の治療で無増悪生存期間の改善がみられていました(N Engl J Med. 1986 Sep 11;315(11):657-63).

 

1995年に出版された大規模前向きの臨床試験(CALGB 8111)では、16歳~80歳の急性リンパ芽球性白血病症例に対して、シクロホスファミドダウノルビシンビンクリスチンプレドニゾンL-アスパラギナーゼを用いた4週間の化学療法(寛解導入療法)を行い、その後も2年近く多剤併用化学療法を継続しました(下図 Blood. 1995 Apr 15;85(8):2025-37).

急性リンパ芽球性白血病 CALGB 8111

結果、完全寛解率は85%, 寛解導入療法中の致死率は9%でした。

生存期間の中央値は36か月でしたが、年齢によって予後は明らかに異なるという結果でした(下図).

急性リンパ芽球性白血病 CALGB 8111 年齢別全生存率

30~59歳では生存期間の中央値は25か月、60歳以上では1か月でした。急性リンパ芽球性白血病では若年者ほど同じ治療であっても生存率は大きく改善します。

 

2000年にMDアンダーソンがんセンターの治療結果が出版されました(J Clin Oncol. 2000 Feb;18(3):547-61)。

Hyper-CVAD療法と呼ばれる治療で、シクロホスファミドビンクリスチンドキソルビシンデキサメタゾンによる化学療法と、大量メソトレキセート大量シタラビンメチルプレドニゾロンによる化学療法を交互に繰り返し、さらに抗腫瘍薬の髄腔内投与もその間繰り返し行うという治療方法です。

16歳~79歳の急性リンパ芽球性白血病症例に対して、このHyper-CVAD療法を行ったところ完全寛解率は92%とかなり高い割合となりました。

生存期間の中央値は35か月、5年生存率は38%でした。年齢による違いも明らかでしたが、60歳以上での予後が約1年と上記CALGB 8111の時より良好です(下図)。

急性リンパ芽球性白血病 Hyper-CVAD 年齢別生存率

このHyper-CVAD療法は、それ以前まで行っていたVAD療法に比べて、全生存期間を約2倍に改善しました(下図 Cancer. 2004 Dec 15;101(12):2788-801).

急性リンパ芽球性白血病 Hyper-CVAD vs VAD OS

ただしこれは後ろ向きの比較になりますので、時代の違いなどの化学療法を除いた部分の改善なども影響します。信頼性はあまり高くはありません。

とはいえHyper-CVAD療法は完全奏効率90%以上を達成し、高齢者の生存も過去の試験よりもよかったことから、急性リンパ芽球性白血病の重要な治療方法となります。

 

そのころに行われた大規模ランダム化臨床試験(GIMEMA ALL 0288試験)では、約1か月の化学療法(寛解導入療法)でビンクリスチンプレドニゾンL-アスパラギナーゼダウノルビシンに、シクロホスファミドを追加するか追加しないかでランダム化して比較しました(Blood. 2002 Feb 1;99(3):863-71)。

しかし完全寛解率はシクロホスファミドを追加しない群で83%であったのに対して、シクロホスファミドを追加した群で81%でした。全生存期間もほとんど変わりありませんでした。

シクロホスファミドそのものは明らかに有効な薬剤とは言えませんでした。

このことからHyper-CVAD療法ではシクロホスファミドの追加よりも、大量メソトレキセート大量シタラビンの組み合わせの追加ほうが重要であったと推測されます。

 

2000年ごろまでにHyper-CVAD療法は急性リンパ芽球性白血病の非常に重要な治療方法になっていったと言えます。

しかし他の治療とのランダム化比較試験は行われていないので、本当に他の治療より良いかどうかはわかりません。

 

急性リンパ芽球性白血病に対する小児の多剤併用化学療法

2008年にある後ろ向き研究の結果がでています(Blood. 2008 Sep 1;112(5):1646-54)。

16歳~20歳の急性リンパ芽球性白血病症例に小児の治療あるいは成人の治療を行った成績を比較しました。小児の治療は薬剤の投与量が成人の治療よりも多くなります。

結果、完全寛解率はいずれも90%でした。

しかしながら、全生存期間は小児の治療方法を用いたほうが、成人の治療方法を用いるよりも統計学的にも明らかに良好な結果となりました7年生存率は小児の治療で67%、成人の治療で46%でした(下図, p<0.0002)。

急性リンパ芽球性白血病 小児治療 vs 成人治療 OS

ただし後ろ向き研究の結果なのであまりあてにはできません。前向きに検討する必要があります。

 

このころからフィラデルフィア染色体陽性症例にはイマチニブなどのチロシンキナーゼ阻害薬を用いるようになってきたため、臨床試験をフィラデルフィア染色体陰性もしくは陽性で別に行うようになりました。

 

2009年に小児の治療を成人に用いた大規模な前向きの臨床試験(GRAALL-2003試験)の結果が出版されました(J Clin Oncol. 2009 Feb 20;27(6):911-8).

フィラデルフィア染色体陰性15歳~60歳の症例を対象としました。

この治療では、最初にビンクリスチン・プレドニゾン・L-アスパラギナーゼ・ダウノルビシン、シクロホスファミドおよび抗腫瘍薬の髄腔内投与による寛解導入療法を行いますが、成人の治療よりも投与量が多くなりす。さらにその後も大量シタラビンや大量メソトレキセートを中心とした化学療法が続きます(下図)。

GRAALL-2003 治療

高リスクとされた症例は可能であればHLA一致の血縁・非血縁(10/10一致)からの同種造血幹細胞移植が行われました。

その結果、完全寛解率は93.5%と高い割合でした。42か月全生存率は60%でした(下図).

GRAALL-2003 EFS OS

しかしながら、治療毒性が高く、治療関連死亡率は45歳以下では5%でしたが、45歳を超えると23%にもなりました。

この治療は45歳以下のみの推奨となりましたが、小児の治療が成人にも適応されていくようになりました。

 

高齢者の治療毒性の高さはHyper-CVAD療法などでも問題となりました。

Hyper-CVAD療法では60歳以上の症例に対して行うと、寛解に到達する前の段階で致命的な合併症がおよそ10%に発生し、完全寛解に到達する割合は84%に低下します。

その後治療をつづけても5年生存率は20%でした(Cancer. 2008 Oct 15;113(8):2097-101)。

 

別の大規模前向き臨床試験でも完全寛解に到達する前の段階で致命的な合併症を起こす割合は、55歳未満だと4%でしたが、55~65歳では18%にもなりました(Br J Haematol. 2012 May;157(4):463-71)。

 

成人の場合は、治療を強くすれば治療毒性も上昇します。必ずしも治療を強くすれば生存率が改善するとは言えません。

45歳以下でも小児と成人どちらの治療がよいのかランダム化して比較したわけではありません

55歳以上では小児の治療どころか成人の治療でも毒性は上昇します。

 

MDアンダーソンがんセンターで40歳まで小児の治療(Augmented BFM)を用いる前向き臨床試験を行い、40歳までの症例にHyper-CVAD療法を行った結果と後ろ向きに比較しました(Cancer. 2014 Dec 1;120(23):3660-8)。

その結果、完全寛解率は小児の治療(Augmented BFM)で94%, Hyper-CVAD療法で99%でした。いずれも非常に良好な割合です。

3年生存率は小児の治療(Augmented BFM)で74%, Hyper-CVAD療法で71%と有意な差はありませんでした(下図)。

急性リンパ芽球性白血病 Hyper-CVAD vs AugBFM OS

その後の追加報告では5年生存率はどちらも60%でした(Am J Hematol. 2016 Aug;91(8):819-23)。

急性リンパ芽球性白血病 Hyper-CVAD vs AugBFM 5yOS

後ろ向き研究の結果なのであまりあてにはできませんが、40歳以下では小児の治療もHyper-CVAD療法もいずれも同じくらいの治療成績である可能性があります。これらのランダム化比較試験はありません。

Hyper-CVAD療法にも言えますが、急性リンパ芽球性白血病は若年者限定にすると治療成績が良いように見えます

たとえば24歳までのフィラデルフィア染色体陰性症例を対象とした日本の前向き臨床試験(JALSG ALL202-U)では小児の治療により完全寛解率94%, 5年生存率73%でした(Blood Cancer J. 2014 Oct 17;4:e252)。

臨床試験参加者の年齢などの条件によって臨床試験の成績は大きく変わります。条件の異なる臨床試験から出た完全寛解率や生存率を比較してもどちらがよいとは言えません。

比較する場合はランダム化比較試験を行うことが望ましいです。

 

2015年ごろまでに小児の治療方法も45歳までのフィラデルフィア染色体陰性の急性リンパ芽球性白血病の非常に重要な治療方法になりました。

しかし成人の治療をふくむ他の治療とのランダム化比較試験は行われていないので、本当に他の治療より良いかどうかはわかりません。

 

急性リンパ芽球性白血病への新規薬剤の導入と既存治療薬の投与量変更

B細胞性の悪性腫瘍にはリツキシマブ(商品名:リツキサン)が奏効することが悪性リンパ腫などでわかっています。

CD20陽性のB細胞性の急性リンパ芽球性白血病に対してリツキシマブを追加したら治療成績が改善する可能性が2010年の大規模な前向き臨床試験の結果から指摘されました(J Clin Oncol. 2010 Aug 20;28(24):3880-9)。

フィラデルフィア染色体陰性でCD20が陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病の15~83歳の症例に対して、リツキシマブとHyper-CVAD療法を併用して前向きに評価しました。

結果、完全寛解率は95%, 5年生存率は50%でした。

過去のHyper-CVAD療法の結果と後ろ向きに比較した結果、3年時点で完全寛解を維持している割合や全生存率はリツキシマブを追加したほうが統計学的にも明らかに良好でした(下図, p=0.003)

CD20陽性急性リンパ芽球性白血病 Hyper-CVAD vs R-Hyper-CVAD, OS

後ろ向きに比較しただけなので信頼性はあまり高くはありません。ランダム化比較試験が必要になります。

 

2016年に小児の治療にリツキシマブを追加するかしないかを比較した大規模ランダム化比較試験(GRAALL-2005試験)の結果が出版されました(N Engl J Med. 2016 Sep 15;375(11):1044-53)。

フィラデルフィア染色体陰性でCD20が陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病の18~59歳の症例を対象に行われました。

完全寛解率はリツキシマブを追加しない群で90%、追加した群で92%と有意な差はありませんでした(p=0.63)。

4年時点で完全寛解の上で生存している割合は、リツキシマブを追加しない群で43%、追加した群で55%と、統計学的にも明らかにリツキシマブを追加したほうが良好でした(下図 p=0.04)。

急性リンパ芽球性白血病 GRAALL-2005 R vs no R, EFS

最も重要な生存期間ですが、4年時点での全生存率はリツキシマブを追加しない群で50%、追加した群で61%とリツキシマブを追加したほうが良好でしたが、統計学的な有意差までは到達していません(下図 p=0.10)

急性リンパ芽球性白血病 GRAALL-2005 R vs no R, OS

リツキシマブの追加による重症な有害事象の有意な増加はみられませんでした。

アスパラギナーゼによる重症なアレルギー反応がリツキシマブを追加した群で有意に減少するという結果でした(下図, p=0.002)。

急性リンパ芽球性白血病 GRAALL-2005 R vs no R, SAE

CD20陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病にはリツキシマブを追加したほうがよいといえます。CD20陽性の基準は腫瘍細胞の20%以上が陽性であることです。

リツキシマブの追加を検討した治療方法はHyper-CVAD療法GRAALL-2005になります。

 

このGRAALL-2005の臨床試験では、抗がん剤の一つであるシクロホスファミドの投与方法についてもランダム化して比較しました(J Clin Oncol. 2018 Aug 20;36(24):2514-2523)。

長い間Hyper-CVAD療法のようにシクロホスファミドが高用量・分割(Hyper-C)で投与されてきました。それをCHOP療法のシクロホスファミドのような投与(Standard-C)と比較しました。

結果、完全寛解率はHyper-C群で93.6%, Standard-C群で90.2%でした。統計学的な有意差まではありません(p=0.09).

5年時点での生存かつ完全寛解維持している割合はHyper-C群で54.2%, Standard-C群で50.1%とほとんど変わりありませんでした(下図, p=0.25)。

急性リンパ芽球性白血病 GRAALL-2005 HyperC vs StandardC, EFS

5年全生存率はHyper-C群で59.5%, Standard-C群で57.4%とほとんど変わりありませんでした(p=0.45)。

そもそもシクロホスファミドについては以前から有効性がはっきりしていたわけではありません。

小児の治療方法を用いる場合はHyper-CよりもStandard-Cでよいと考えられます。

この臨床試験でも年齢別に比較すると治療成績がかわります(下図, 生存かつ完全寛解維持している割合).

急性リンパ芽球性白血病 GRAALL-2005 年齢別EFS

55歳以上では寛解導入療法中の致命的な合併症が18.3%にもみられました。55歳未満では数%です。

GRAALL-2005は55歳までが適応となります

 

2018年にメソトレキセートの投与量についての大規模ランダム化臨床試験の結果が出版されました(Leukemia. 2018 Mar;32(3):626-632)。日本の臨床試験です(JALSG ALL 202-O)

フィラデルフィア染色体陰性の症例で、完全寛解に到達後、メソトレキセートを大量(3 g/m²)に投与する群と標準量(0.5 g/m²)で投与する群にランダム化して比較しました。

結果、ランダム化から5年での完全寛解を維持して生存している割合は、大量メソトレキセート群で58%、標準量メソトレキセート群で32%と、大量メソトレキセート群のほうが統計学的にも明らかに良好でした(下図, p=0.0218)。

急性リンパ芽球性白血病 JALSG ALL202O HDMTX vs IDMTX, DFS

5年全生存率は大量メソトレキセート群で64%、標準量メソトレキセート群で48%でした。有意な差はありませんでした(下図, p=0.2381).

急性リンパ芽球性白血病 JALSG ALL202O HDMTX vs IDMTX, OS

上記の結果は完全寛解後のランダム化してからの生存になりますので、初回治療開始からの生存率ではありません。

重症な有害事象の発生率も両群で有意な差はありませんでした。

メソトレキセートは大量のほうが再発しにくいと言えます。

 

2019年に小児の治療を成人に行った大規模前向き臨床試験(CALBG 10403)の結果が出版されました(Blood. 2019 Apr 4;133(14):1548-1559)。

40歳未満の症例を対象にし、完全寛解率は89%, 3年生存率は73%でした。

2020年の時点でアメリカでもっとも広くおこなわれていると考えられる成人対象の小児治療方法です。

完全寛解症例に測定可能残存病変(MRD)をPCRを用いて確認していましたが、MRDが陰性になったほうが陽性よりも圧倒的に生存率は良好です(下図 p=0.0006)。

CALGB10403 MRD pos vs neg, EFS

 

高齢者の急性リンパ芽球性白血病に対する新規薬剤の導入も検討されています。

2019年に高齢のフィラデルフィア染色体陰性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病の症例を対象に減量した多剤併用化学療法(mini-Hyper-CVD)イノツズマブ オゾガマイシンブリナツモマブを併用する前向き臨床試験が行われました。

この治療での早期死亡率は0%でした。

過去の高齢者のHyper-CVAD療法と後ろ向きに比較した結果、3年生存率はHyper-CVAD療法群で34%でしたが、イノツズマブ群では63%と統計学的にも明らかに良好でした(下図, p=0.004)。

急性リンパ芽球性白血病 miniHCVD+INO±Blina vs HCVAD, OS

後ろ向きの比較の結果なので信頼性はあまり高くはありませんが、今後臨床試験が進んでいくと考えられます。

 

2020年に31歳までのT細胞性の急性リンパ芽球性白血病の症例に対するネララビンの大規模ランダム化臨床試験の結果が出版されました(J Clin Oncol. 2020 Aug 19;JCO2000256).
小児の化学療法であるABFM療法にネララビンを追加するかしないかで比較したランダム化試験でした

完全奏効を維持したまま生存している割合は、5年時点でネララビンありの群では88.2%, ネララビンなしの群で82.1%であり、統計学的にもあきらかにネララビンを追加した群のほうが良好でした(下図, p=0.029)。

T細胞性急性リンパ芽球性白血病 ネララビン+ABFM vs ABFM, DFS

 

しかしながら、全生存率は5年時点でネララビンありの群では90.3%, ネララビンなしの群で87.9%であり、統計学的な有意差はありませんでした(下図, p=0.168).

T細胞性急性リンパ芽球性白血病 ネララビン+ABFM vs ABFM, OS

有害事象はネララビンを追加したほうが多くなります。

 

以上より2020年12月時点では、フィラデルフィア染色体陰性の急性リンパ芽球性白血病(およびリンパ芽球性リンパ腫)に対する初回化学療法としては、アントラサイクリン系薬剤を含む多剤併用化学療法と大量メソトレキセート、そして適応であればリツキシマブを用いた治療方法がよいと考えられます。

年齢によっては小児の治療方法を用いてもよいです。

具体的な治療名はB細胞性の場合は、R-Hyper-CVADもしくはGRAALL-2005/Rを推奨します。

T細胞性の場合は小児治療を用いるなら適応年齢に注意してGRAALL-2005CALGB 10403JALSG ALL202-U、小児治療でなければHyper-CVAD療法JALSG ALL202-Oなどになります。

高齢の場合は減量Hyper-CVADイノツズマブ オゾガマイシン+mini-Hyper-CVDです。

ただしCALBGの治療では日本未承認薬が含まれます。

 

2020年12月時点でのアメリカのNCCNガイドライン(NCCN Guidelines)では、フィラデルフィア染色体陰性の急性リンパ芽球性白血病(およびリンパ芽球性リンパ腫)に対する初回化学療法としては、小児の治療を用いることができる場合は小児の治療を推奨しています。

CALGB 10403のほかGRAALL-2005, DFCIPETHEMA ALL-96を、成人の治療方法を用いる場合はHyper-CVADCALGB 8811などを推奨しています。

65歳以上では減量化学療法が推奨になっていますが、B細胞性にはイノツズマブ オゾガマイシン+mini-Hyper-CVDも推奨に含まれています。

日本ではJALSG 202-UやJALSG 202-Oを用いることがありますが、NCCNガイドラインでは推奨一覧に入っていません。

 

日本血液学会の2018年造血器腫瘍診療ガイドラインでは、「思春期・若年成人ALLは,小児プロトコールによる治療が勧められる」としています。

成人・高齢者の化学療法については、「開発段階である」としています。特定の治療方法の推奨はありません。JALSG 202-UやJALSG 202-Oの記載はあります。

 

R-Hyper-CVADもしくはGRAALL-2005/Rの実際の投与スケジュールや注意点については次項以降をご覧ください。

ALLのHyper-CVAD奇数サイクル 1
急性リンパ芽球性白血病(ALL)に対するR-Hyper-CVAD療法の実際と注意点

続きを見る

GRAALL-2005R 急性リンパ芽球性白血病 寛解導入療法1
急性リンパ芽球性白血病に対するGRAALL-2005療法の実際と注意点(前半)

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GRAALL-2005R Consolidation Block 1
急性リンパ芽球性白血病に対するGRAALL-2005療法の実際と注意点(後半)

続きを見る

まとめ フィラデルフィア染色体陰性急性リンパ芽球性白血病の初回化学療法

急性リンパ芽球性白血病/リンパ芽球性リンパ腫の治療はHyper-CVAD療法などの「多剤併用化学療法」が主要な治療方法です。

小児の治療方法もフィラデルフィア染色体陰性の急性リンパ芽球性白血病の非常に重要な治療方法です。

● フィラデルフィア染色体陰性の急性リンパ芽球性白血病(およびリンパ芽球性リンパ腫)に対する初回化学療法としては、アントラサイクリン系薬剤を含む多剤併用化学療法大量メソトレキセート、そして適応であればリツキシマブを用いた治療方法がよいと考えられます。

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NCCNガイドライン(NCCN Guidelines)

2018年造血器腫瘍診療ガイドライン

 

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