再発・難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の治療 DLBCLとの違い

再発・難治性 原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫 ニボルマブ+ブレンツキシマブ 奏効率

 

原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫でも初回治療に奏効がない場合や、奏効しても再発してしまう場合があります。

再発あるいは難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の治療は基本的には通常のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と同様の治療を行いますが、少しだけ違いがあります。免疫チェックポイント阻害薬です。

その点について以下解説していきます。

通常のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の再発あるいは難治性の場合の治療については「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL) 再発時の検査と治療方針 自家移植の有効性」「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL) 初発難治性の治療戦略と予後」をご覧ください。

 

再発・難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の治療戦略

原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫は初回治療により多くの症例で長期生存が期待できますが、残念ながら再発することもあります。初回治療で奏効がない(難治性)こともあります。

生検で再発・難治性が確認された原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の治療については、初回治療と同様に原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の症例だけを対象とした大規模ランダム化臨床試験の結果が乏しいため、何が良いのかはっきりしていません

したがって、再発あるいは難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の治療は、再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療を行うことになります。

化学療法が有効(部分奏効以上)であれば自家造血幹細胞移植を行います(Biol Blood Marrow Transplant. 2018 Oct;24(10):2133-2138)。

化学療法に奏効がみられなければ、CAR-T細胞療法などを行います(N Engl J Med. 2017 Dec 28;377(26):2531-2544)。

自家造血幹細胞移植やCAR-T細胞療法などを行っても再発した場合や適応にならない場合については、治療に難渋することになります。

同種造血幹細胞移植を行うよりもCAR-T細胞療法を優先したほうが良いでしょう。

それ以外に再発あるいは難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の症例に対する新規薬剤の臨床試験が複数行われており、その中にはある程度の奏効が期待できるものもあります。

 

再発・難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫に対する臨床試験 ブレンツキシマブ、ニボルマブ

ブレンツキシマブ ベドチン(商品名:アドセトリス)CD30に対する抗体薬にMMAEという微小管阻害薬を結合させた薬剤です。

CD30陽性となるホジキンリンパ腫やT細胞リンパ腫に有効な薬剤です。

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫もしばしばCD30が陽性となるため、ブレンツキシマブ ベドチンの効果が期待され、臨床試験が行われました。

 

2017年に再発・難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫に対するブレンツキシマブ ベドチンの前向き臨床試験の結果が出版されました(Blood. 2017 Apr 20;129(16):2328-2330)。

ところが、全奏効率はたったの13%で、完全奏効率は0%という結果でした。

この臨床試験は奏効の乏しさのため早期中止となりました。

 

CD30陽性となる他のリンパ腫には有効であったとしても、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫に対してはブレンツキシマブ ベドチンはほとんど無効でした。原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫をホジキンリンパ腫と似たような疾患と考えてはいけません。

 

 

ニボルマブ(商品名:オプジーボ)は肺癌など様々な悪性腫瘍に用いられる薬剤です。PD-1に対する抗体薬です。免疫チェックポイント阻害薬とも呼ばれます。PD-1を阻害することにより、T細胞の制御を阻害し、T細胞を活性化・増殖させ抗腫瘍効果を発揮するとされています。

ニボルマブもホジキンリンパ腫に有効です。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫にはあまり効果はありません。

 

再発・難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫に対して、ニボルマブとブレンツキシマブ ベドチンを併用した前向き臨床試験の結果が2019年に出版されています(J Clin Oncol. 2019 Nov 20;37(33):3081-3089).

この臨床試験(CheckMate 436試験)では、全奏効率は70%で、完全奏効率は43%と比較的高い奏効率となりました(下図)。

再発・難治性 原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫 ニボルマブ+ブレンツキシマブ 奏効率

重症な有害事象で主なものは血球減少と末梢神経障害でした。治療関連での死亡はありませんでした。

6か月時点での無増悪生存率は63.5%, 全生存率は85.3%でした(下図、左 無増悪生存率、右 全生存率)。

再発・難治性 原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫 ニボルマブ+ブレンツキシマブ PFS OS

ブレンツキシマブ ベドチンの併用の効果はわかりませんが、ニボルマブはある程度有効であると考えられます。

ただし2020年9月時点では、ニボルマブもブレンツキシマブ ベドチンのいずれもアメリカでも日本でも原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫に対して承認されてはいません。

 

再発・難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫に対するペムブロリズマブ

ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)もPD-1に対する抗体薬です。

再発・難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫に対して、ペムブロリズマブ単剤で治療した前向き臨床試験の結果が2019年に出版されています(J Clin Oncol. 2019 Dec 1;37(34):3291-3299).

この臨床試験(KEYNOTE-170試験)では、全奏効率は45%で、完全奏効率は13%でした。

1年無増悪生存率は38%、1年全生存率は58%でした。

 

ペムブロリズマブは再発・難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫にある程度の奏効はあると考えられます。ペムブロリズマブは再発・難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫に対してアメリカで承認されています。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と異なり、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫にはPD-1に対する抗体薬の効果がある程度みられますが比較試験ではありません。

再発・難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫に対しては通常のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と同じように、自家造血幹細胞移植、CAR-T細胞療法などを行うことまずは推奨します。

 

2020年9月時点でのアメリカのNCCNガイドライン(NCCN Guidelines)では、再発・難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫に対しては、通常のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と同様の治療方法を推奨しています。それ以外にペムブロリズマブニボルマブ+ブレンツキシマブ ベドチンを弱く推奨しています。

日本血液学会の2018年造血器腫瘍診療ガイドラインでは、再発・難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫に対する治療の特別な推奨はありません。通常のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と同様の治療方法となります。

 

まとめ 再発・難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の治療 DLBCLとの違い

● 再発あるいは難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の治療は特別に何が良いのかはっきりしていません再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療になります。

● 原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫に対してブレンツキシマブ ベドチンの奏効は乏しいです。ニボルマブを併用するとある程度有効であると考えられます。

● ペムブロリズマブは再発・難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫にある程度の奏効はあると考えられアメリカでは原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫に承認されています。

参考文献

Santosha Vardhana, Paul A Hamlin, Joanna Yang, et al.
Outcomes of Relapsed and Refractory Primary Mediastinal (Thymic) Large B Cell Lymphoma Treated with Second-Line Therapy and Intent to Transplant
Biol Blood Marrow Transplant. 2018 Oct;24(10):2133-2138.

Sattva S Neelapu, Frederick L Locke, Nancy L Bartlett, et al.
Axicabtagene Ciloleucel CAR T-Cell Therapy in Refractory Large B-Cell Lymphoma.
N Engl J Med. 2017 Dec 28;377(26):2531-2544.

Pier Luigi Zinzani, Cinzia Pellegrini, Annalisa Chiappella, et al.
Brentuximab vedotin in relapsed primary mediastinal large B-cell lymphoma: results from a phase 2 clinical trial
Blood. 2017 Apr 20;129(16):2328-2330.

Pier Luigi Zinzani, Armando Santoro, Giuseppe Gritti, et al.
Nivolumab Combined With Brentuximab Vedotin for Relapsed/Refractory Primary Mediastinal Large B-Cell Lymphoma: Efficacy and Safety From the Phase II CheckMate 436 Study
J Clin Oncol. 2019 Nov 20;37(33):3081-3089.

Philippe Armand, Scott Rodig, Vladimir Melnichenko, et al.
Pembrolizumab in Relapsed or Refractory Primary Mediastinal Large B-Cell Lymphoma
J Clin Oncol. 2019 Dec 1;37(34):3291-3299.

造血器腫瘍診療ガイドライン

NCCN Guidelines


びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 (DLBCL) 診断と治療の概要に戻る

 

© 2021 Cwiz Hematology