原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の治療効果判定 偽陽性が多いことに注意

2020-10-16

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫 治療効果判定 Deauville 1-5, EFS

 

原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫の初回治療が終了したら、治療効果判定です。

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫でも通常のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と同様にPET-CTで治療効果判定を行います。

ただし通常のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と異なり原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫では判定が難しいという問題点があります。

本項では原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の治療効果判定、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫との違い、効果判定の注意点について、医学文献やガイドラインを参照に解説していきます。

 

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の初回治療については「原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の初回治療 化学療法は何がよいか?」をご覧ください。

通常のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療効果判定については「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の初回治療の効果判定」をご覧ください。

 

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の治療効果判定 Lugano基準

原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫治療効果判定も、通常のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と同様にPET-CT検査を行い、Lugano基準にもとづいて判定を行います(J Clin Oncol. 2014 Sep 20;32(27):3059-68)。

PET-CTは化学療法終了6~8週間後以降に行います。放射線治療を行った場合は治療終了8~12週間後以降にPET-CTを行います。

PET-CTの判定はDeauville点数を用いた5段階評価です。

ここまでは通常のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と同様ですが、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の場合は、特別な注意点があります。

 

通常のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫ではDeauville点数が1~3点だった場合は完全奏効(CMR)となります。4~5点だった場合は残存病変が疑われます。

 

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫でも、治療効果判定のPET-CTでDeauville点数が1~3点だった場合は、4~5点だった場合よりも明らかに予後は良好です。

2014年に原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫を対象としたPET-CT判定の前向き臨床試験の結果が出版されました(J Clin Oncol. 2014 Jun 10;32(17):1769-75)。

治療後のDeauville点数が1~3点の症例は約7割でした。残り3割は4~5点です。

無増悪生存率は5年時点で、Deauville点数が1~3点だと99%でしたが、4~5点では68%であり、統計学的にも明らかに差がみられました(下図, p<0.0001).

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫 治療効果判定 Deauville 1-3 vs 4-5, PFS

Deauville点数が1~3点の症例はほとんど再発せずに長期生存していました。

全生存率は5年時点で、Deauville点数が1~3点だと100%でしたが、4~5点では83%であり、統計学的にも明らかに差がみられました(下図, p=0.0003).

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫 治療効果判定 Deauville 1-3 vs 4-5, 全生存率

Deauville点数が1~3点の症例は5年時点で全例生存していました。

Lugano基準にもとづいた判定は原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫でも当てはまると考えられました。

 

ところが、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の効果判定には偽陽性が多い可能性が指摘されることになります。

 

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫 治療後PET-CTの高い偽陽性率

2017年にアメリカから多施設の後ろ向き研究の結果が報告されました(Br J Haematol. 2017 Dec;179(5):739-747)。

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫に対してDA-EPOCH-R療法で治療した症例の解析悔過です。

増悪や二次発がんがなく生存している割合は3年時点で、Deauville点数が1~3点だとおよそ95%でしたが、4点でもおよそ75%でした。5点になると30%でした。同じPET-CT陽性判定であっても、4点と5点では大きな差がみられました(下図)。

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫 治療効果判定 Deauville 1-5, EFS

そして全生存率については、3年時点でDeauville点数が1~4点だとおよそ97%でした。4点でも全生存率は低下しませんでした。5点になると74%と明らかに低下しました(下図, p=0.001)。

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫 治療効果判定 Deauville 1-5, 全生存率

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫では治療後Deauville 4点でも生存率は低下しない可能性が指摘されました。

さらにこの研究では、PET-CTが陽性(Deauville 4~5点)でも無治療経過観察をした症例は追跡期間1年以上(中央値)の時点でも約7割の症例で明らかな病変の増悪なく生存していました

 

PET-CTが陽性でも偽陽性(残存病変がないのにPET-CTが陽性)である可能性が考えられました。特にDeauville 4点は高い確率で偽陽性であると考えられました。

 

前向き臨床試験での治療後PET-CTについて研究が行われ、2018年に結果が出版されました(Haematologica. 2018 Aug;103(8):1337-1344)。

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫に対するDA-EPOCH-R療法の第2相臨床試験に参加した症例の治療後PET-CTとその後の予後についての追加研究です。

治療後PET-CTで完全奏効(CMR, Deauville 1~3点)の症例は約70%でした。完全奏効の症例の8年全生存率は97.7%と良好でした。

残りの治療後PET-CTで陽性(Deauville 4~5点)の症例のうち、本当に病変が増悪した症例は20%だけでした。

Deauville 4点で本当に病変が増悪した症例は5%、Deauville 5点で本当に病変が増悪した症例は50%でした。

Deauville 4~5点でも8年全生存率は84.3%でした。PET-CTを定期的に行っても、これらの症例は病変の増悪がないままDeauville 4~5点が続く症例が多い結果でした(下図).

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫 治療効果判定 Deauville 4-5 Serial PET-CT

Deauville 4~5点でも偽陽性率がかなり高いと言えます。

 

これらの結果から、通常のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫とは異なる原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の治療後の戦略が提唱されることになります。

 

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の効果判定後の治療計画

通常のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫では完全奏効(CMR)を達成したら、以降は無治療で経過観察となります。部分奏効(PMR)や奏効なしの場合は残存病変を疑い生検を行う必要があります。

通常のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療効果判定については「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の初回治療の効果判定」をご覧ください。

 

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫では、完全奏効(CMR)を達成したら以降は無治療で経過観察となりますが、部分奏効(PMR)の場合は「経過観察」という選択肢が発生します(下図, Blood. 2018 Aug 23;132(8):782-790)。

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫 治療効果判定と治療戦略

経過観察は慎重に行います。状況に応じてPET-CT検査を繰り返し行う場合もあります。病変の増悪が疑われたら、「生検」を行います(Br J Haematol. 2019 Apr;185(1):25-41)。

部分奏効(PMR)の時点では必ずしも直ちに生検を行わなくてもよいと考えられます。

 

初回治療で奏効がない場合は早めに「生検」で病変を確認することが望ましいです。本当に奏効しない原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫は、直ちに次の治療計画を立てる必要があります。時間に余裕はありません。

再発あるいは難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の治療については「再発・難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の治療 DLBCLとの違い」をご覧ください。

 

2020年9月時点でのアメリカのNCCNガイドライン(NCCN Guidelines)では、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫では治療後も残存腫瘤がみられることがあり、治療後効果判定にPET-CTは必須としています。追加治療を行う場合はPET-CT陽性の腫瘤を生検することを推奨しています。

日本血液学会の2018年造血器腫瘍診療ガイドラインでは、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の治療効果判定についての特別な記載はありません。

 

まとめ 原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の治療効果判定 偽陽性が多いことに注意

● 原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の治療効果判定も通常のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と同様にPET-CT検査を行いLugano基準にもとづいて判定を行います

● 原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫では治療後PET-CTが陽性(Deauville 4~5点)でも偽陽性(残存病変がないのにPET-CTが陽性)である可能性があります。特にDeauville 4点は高い確率で偽陽性になります。

● 原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫では、完全奏効(CMR)を達成したら以降は無治療で経過観察となりますが、部分奏効(PMR)の場合は「経過観察」という選択肢が発生し、必ずしも直ちに生検を行わなくてもよいと考えられます。初回治療で奏効がない場合は早めに「生検」で病変を確認することが望ましいです。

参考文献

Bruce D Cheson, Richard I Fisher, Sally F Barrington, et al.
Recommendations for initial evaluation, staging, and response assessment of Hodgkin and non-Hodgkin lymphoma: the Lugano classification.
J Clin Oncol. 2014 Sep 20;32(27):3059-68.

Maurizio Martelli, Luca Ceriani, Emanuele Zucca, et al.
[18F]fluorodeoxyglucose positron emission tomography predicts survival after chemoimmunotherapy for primary mediastinal large B-cell lymphoma: results of the International Extranodal Lymphoma Study Group IELSG-26 Study
J Clin Oncol. 2014 Jun 10;32(17):1769-75.

Lisa Giulino-Roth, Tara O'Donohue, Zhengming Chen, et al.
Outcomes of adults and children with primary mediastinal B-cell lymphoma treated with dose-adjusted EPOCH-R
Br J Haematol. 2017 Dec;179(5):739-747.

Christopher Melani, Ranjana Advani, Mark Roschewski, et al.
End-of-treatment and serial PET imaging in primary mediastinal B-cell lymphoma following dose-adjusted EPOCH-R: a paradigm shift in clinical decision making
Haematologica. 2018 Aug;103(8):1337-1344.

Lisa Giulino-Roth
How I treat primary mediastinal B-cell lymphoma
Blood. 2018 Aug 23;132(8):782-790.

Charlotte Lees, Colm Keane, Maher K Gandhi, et al.
Biology and therapy of primary mediastinal B-cell lymphoma: current status and future directions
Br J Haematol. 2019 Apr;185(1):25-41.

造血器腫瘍診療ガイドライン

NCCN Guidelines


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