原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫のステージ分類と予後、治療開始前に行うこと

2020-10-12

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫 vs びまん性大細胞型B細胞リンパ腫, 無増悪生存率

 

原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫の診断となったら、治療を開始する前に行うことがあります。ステージ分類治療前検査妊娠・出産能力の温存などです。

本項では原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の診断後に行うことについて解説します。原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の症状・検査・診断については「原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫 症状と検査から診断まで」をご覧ください。

また本項では原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の予後はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫よりも悪いかどうかについても解説します。

後ろ向き研究の結果になりますが、比較的規模の大きな研究の結果を用いて解説していきます。

 

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の初回治療については「原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の初回治療 化学療法は何がよいか?」をご覧ください。

 

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫のステージ分類

原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫の診断となった時点で、全身の広がり(ステージ)を確認します。

ステージ決定のための検査や基準はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)と同様です。PET-CT骨髄検査を行い、Lugano基準を用いてステージを決定します。

詳細は「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫のステージ PET-CTとLugano分類」をご覧ください。

 

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫では通常のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と頻度が異なります

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の症例は、約65%~75%で診断時には限局期(ステージ1~2)になります(J Clin Oncol. 1998 Aug;16(8):2780-95)。

進行期の症例のほうが少ないです。骨髄まで浸潤している症例は3%です。限局期とはいえ巨大腫瘤を形成していることのほうが多いです。

 

PET-CT検査は治療開始前にも行うことを推奨します。治療後の効果判定のときに治療前PET-CTの結果が非常に重要になります。

とくに原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の場合は治療後PET-CTで偽陽性が多いため、通常のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫よりも治療前PET-CTは重要です。

 

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の予後はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫よりも悪い?

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の予後は、通常のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と比較しても、特に悪いというわけではありません

 

2006年にカナダのブリティッシュコロンビアから比較的規模の大きな後ろ向き研究の結果が報告されています(Ann Oncol. 2006 Jan;17(1):123-30)。

リツキシマブが登場する前の症例がほとんどですが、およそ9年間という長期の経過を確認しています。

結果、無増悪生存率は10年時点で原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫では69%で傾きがなくなっていますが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫では47%で低下傾向のままでした。この違いは統計学的も明らかでした(下図, p=0.0001).

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫 vs びまん性大細胞型B細胞リンパ腫, 無増悪生存率

全生存率も同様に、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫のほうが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫よりも統計学的にも明らかに良好でした(下図, p=0.0001).

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫 vs びまん性大細胞型B細胞リンパ腫, 全生存率

後ろ向き研究の結果の結果なので信頼性はあまり高くありません。

とはいえ、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の予後がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に明らかに劣るわけではないでしょう。

 

 

前向きに原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の予後を観察した研究の結果が、2015年に出版されています(Blood. 2015 Aug 20;126(8):950-6)。

リツキシマブを用いた化学療法で治療した症例です。追跡期間の中央値は3年間でした。

3年時点での無増悪生存率は87%, 全生存率は94%でした。

上記のブリティッシュコロンビアの研究の時よりもさらに予後は改善されているようですが、比較試験ではありませんのではっきりとはしていません。

 

少なくとも原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の予後が、通常のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫よりも悪いとは言えません。良い可能性も十分にあります

 

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の治療開始前に行うこと

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の診断となった時点で、ステージ決定と同時に、治療開始の準備を進めていきます。

心機能の確認やB型肝炎の既往などの確認となりますが、これらはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の場合と同様です。詳細は「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療 限局期の場合」をご覧ください。

 

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と比べて若く発症することと女性に多いことから、化学療法による不妊がしばしば問題となります。

男性の場合は治療開始前に精子の凍結保存を推奨します。比較的短時間で可能です。

 

女性の場合は簡単ではありません。適切なパートナーがいれば、受精卵の凍結保存を行いますが、全身状態が悪く早々に治療を開始しなければならない場合には現実的な選択にはなりません。

時間がない場合の選択肢としては、卵子凍結保存卵巣凍結保存がありますが、あまり確立した技術ではなく、実際に出産までできる確率は低いです。

病気の性質上、完治を見込めるためこれらを検討することはできますが、それでも早めに決断する必要があります。

 

セカンドオピニオン転院を行う場合は理想的には治療開始前です。時間をかけていると重症化する可能性があるため、早めの検討が必要です。

全身状態が悪く緊急で治療が必要であった場合は状態安定後になります。疾患頻度が低いことから、専門施設の受診は検討してもよいと思います。

 

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫では、診断時点でも緊急で気管挿管が必要になったり、心不全を起したりすることがあります。

そのような場合は、すぐに生検を行い、治療を開始する必要があります。PET-CTや妊娠・出産能力の温存は困難になります。

症状が出てから診断までの時間もあまりかけないことがそもそも重要です。

 

まとめ 原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫のステージ分類と予後、治療開始前に行うこと

原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫の診断となったらPET-CT骨髄検査を行い、Lugano基準を用いてステージを決定します。約65%~75%で診断時には限局期(ステージ1~2)ですが、巨大腫瘤を形成していることが多いです。

● 原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の予後は、通常のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と比較しても、特に悪いというわけではありません

● 原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の治療開始前に、心機能の確認、B型肝炎の既往、妊孕性の温存、セカンドオピニオン、転院などを必要であれば行います。

参考文献

J O Armitage, D D Weisenburger
New approach to classifying non-Hodgkin's lymphomas: clinical features of the major histologic subtypes. Non-Hodgkin's Lymphoma Classification Project
J Clin Oncol. 1998 Aug;16(8):2780-95.

K J Savage, N Al-Rajhi, N Voss, et al.
Favorable outcome of primary mediastinal large B-cell lymphoma in a single institution: the British Columbia experience
Ann Oncol. 2006 Jan;17(1):123-30.

Luca Ceriani, Maurizio Martelli, Pier Luigi Zinzani, et al.
Utility of baseline 18FDG-PET/CT functional parameters in defining prognosis of primary mediastinal (thymic) large B-cell lymphoma
Blood. 2015 Aug 20;126(8):950-6.

 

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