原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫 症状と検査から診断まで

2020-10-10

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫 病理 鑑別

原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫(Primary mediastinal (thymic) large B-cell lymphoma)びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の一つの亜型(サブタイプ)とされます。縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫と呼ばれることもあります。

本項では、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の疫学、症状、検査、診断について解説します。

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫は症状が出始めたら、早く検査・診断を行い、直ちに治療が必要になることがよくあります。

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の診断は、腫瘤の一部を採取することが必要です。

早めに診断を確定し早めに治療を行うことが重要です。医学文献を参照に解説していきます。

 

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の疫学、症状

原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫(Primary mediastinal (thymic) large B-cell lymphoma)びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)約7%にみられます(Blood. 1997 Jun 1;89(11):3909-18)。ホジキンリンパ腫を除く悪性リンパ腫の約2.4%です。

通常のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫との違いは、縦隔という心臓や気管の周囲に腫瘤を形成することが特徴であることです。多くは症状がでるまで気がつかないこともあり、巨大腫瘤を形成した状態で診断されます(下図)。

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫 PET-CT

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫よりも若い発症が多く、発症年齢の中央値は35歳前後とされます(J Clin Oncol. 1998 Aug;16(8):2780-95)。とはいえ高齢者でも発症することもあります。

男性よりも女性にやや多く、男女比はおよそ4:6になります(Br J Haematol. 2017 Dec;179(5):739-747)。

 

原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫は、胸腺というリンパ系組織の中のB細胞から発症すると考えられています(下図 Blood. 2018 Aug 23;132(8):782-790).

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫 胸腺B細胞由来

 

体の外側からは腫瘤がわからないため、大きくなって症状が出てから発見されるか、偶然健診など別の理由で検査をしたときに発見されることになります。

胸痛胸部不快感が最も多くみられる症状です。診断時には約70%にみられます(Cancer. 1988 Nov 1;62(9):1893-8)。

その他、が続く、呼吸困難感があるといった症状が約半数でみられます。

発熱夜間の大量発汗体重減少はそれぞれおよそ10~20%にみられます。これれらの症状はB症状と呼ばれ、いずれかがあるのは25%~50%です(Ann Oncol. 2006 Jan;17(1):123-30)。

顔のむくみ、飲み込みづらい、声がかれるといった症状も約10%にみられます。

特に顔のむくみ・呼吸困難と言った症状は上大静脈という巨大な静脈を巨大腫瘤が圧迫していることによって生じているため、「上大静脈症候群」と呼ばれます。

進行すると気管も圧迫され本当に呼吸ができなくなるため、緊急で処置が必要になります。

 

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫 検査・生検

上記のような症状のためCT検査を行うと原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の場合は、ほとんどの症例で5cm以上の腫瘤が確認されます。10cm以上の巨大腫瘤も約6割でみられます(Br J Haematol. 2017 Dec;179(5):739-747)。

腫瘤が大きな状態で発見されることが多いです。

 

他に画像検査では、胸水心嚢水がそれぞれ約半数にみられます。

採血検査では乳酸脱水素酵素(LDH)が多くの場合上昇します(Br J Haematol. 2017 Dec;179(5):739-747)。

ただし乳酸脱水素酵素(LDH)の上昇はいろいろな原因でおこりえるため、LDHが高いからと言って悪性リンパ腫であるとも言えません。

 

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫と診断するためには、腫瘤の一部を切除して検査する必要があります。「生検」といいます。

状況次第では緊急で生検を行う必要があります。

腫瘤の部位によって、縦隔鏡胸腔鏡を用いた手術で生検を行います。生検するだけなので手術時間は短時間です。

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の診断には生検する量が多いほうがよいです。線維化していることが多く、針生検ではリンパ腫の診断自体が難しいことがあります。十分な量の生検を行うことが重要です。

 

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の診断

生検した組織を顕微鏡下(病理標本)で見ると、腫瘍細胞が多数みられます(下図 Mod Pathol. 2012 Dec;25(12):1637-43)。

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫 病理

細胞は中型~大型で、楕円形の核を持ちます。細胞質は白く見えます。このような細胞が多数みられます。

これらの細胞はCD20などのB細胞で陽性になる蛋白を発現しており、CD20に対する免疫染色により陽性になります。

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫ではCD30が弱陽性になることがしばしばあります。通常のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫ではCD30の陽性率はかなり低いです。

またホジキンリンパ腫と異なり、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫ではCD15は通常は陰性です(下図 Blood Adv. 2017 Dec 11;1(26):2600-2609)。

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫 病理 CD20 CD30 CD15

病理標本だけでは、通常のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と区別できないことが多く、病理組織と免疫染色だけで原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫と診断することはできません(Blood. 1997 Jun 1;89(11):3909-18)。

病理組織と免疫染色に加えて、縦隔に大きな腫瘤を形成していることから、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫と診断します。

診断の基準は2016年WHO分類基準を用います(Blood. 2016 May 19;127(20):2375-90).

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の診断については「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の診断 病理所見 鑑別診断」をご覧ください。

 

近年の研究では、MALCD200の免疫染色で通常のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と区別しやすくなることが指摘されています。

CD200はB細胞由来の細胞に陽性であることが多いのですが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫では発現率がかなり低下します。

ある後ろ向き研究ではCD200が陽性(20%以上)となるのはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫では7%でしたが、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫では94%でした(Mod Pathol. 2012 Dec;25(12):1637-43)。

MALは胸腺細胞、胸腺B細胞にみられます。MALが陽性(20%以上)となるのはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫では3%でしたが、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫では86%でした(Mod Pathol. 2012 Dec;25(12):1637-43)。

MALとCD200の免疫染色を用いることで、病理標本でも区別できるようになってきています。

 

ホジキンリンパ腫と原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の区別が難しくなることがあります(下図, Blood. 2011 Sep 8;118(10):2659-69)。

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫 病理 鑑別

ホジキンリンパ腫では強い線維化と結節構造を伴います。CD20は通常陰性ですが、まれにCD20陽性になることがあります。CD30が陽性です。CD15は多くの場合で陽性です。

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫では強い線維化と結節性構造はありません。通常CD15は陰性です。

 

問題になるのは、強い線維化と結節構造がないのに、CD20もCD30もCD15も陽性となる場合などです。ホジキンリンパ腫と区別困難のためグレーゾーンリンパ腫(Gray zone lymphoma)とよばれます(Blood Adv. 2017 Dec 11;1(26):2600-2609).

Gray zone lymphoma 病理

 

グレーゾーンリンパ腫は2016年WHO分類基準ではB-cell lymphoma, unclassifiable, with features intermediate between DLBCL and classical Hodgkin lymphomaという名称です。

ただしグレーゾーンリンパ腫の定義は先進国間でも少し異なります(Haematologica. 2017 Jan;102(1):150-159)。まだ完全に定まっているわけではありません。

 

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫に限らず、リンパ腫の病理診断は血液専門の病理医が行うことが望ましいです。正確な診断が最適な治療に必要です

 

次項では「原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫のステージ分類と予後、治療開始前に行うこと」について解説します。

 

まとめ 原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫 症状と検査から診断まで

原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の一つの亜型(サブタイプ)です。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の約7%とされます。縦隔という心臓や気管の周囲に腫瘤を形成することが特徴で、胸痛胸部不快感が最も多くみられる症状です。

● 原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫のほとんどの症例で5cm以上の腫瘤が確認されます。10cm以上の巨大腫瘤も約6割でみられます。診断するためには十分な量の「生検」が重要です。

● 生検した組織で腫瘍細胞が多数みられ、CD20に陽性です。CD30が陽性になることもあります。病理標本だけでは通常のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と区別できないため、縦隔に大きな腫瘤を形成しているという臨床情報が診断には必要です。

参考文献

The Non-Hodgkin's Lymphoma Classification Project
A clinical evaluation of the International Lymphoma Study Group classification of non-Hodgkin's lymphoma
Blood. 1997 Jun 1;89(11):3909-18.

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Br J Haematol. 2017 Dec;179(5):739-747.

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How I treat primary mediastinal B-cell lymphoma
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Mediastinal large cell lymphoma. An uncommon subset of adult lymphoma curable with combined modality therapy
Cancer. 1988 Nov 1;62(9):1893-8.

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Monika Pilichowska, Stefania Pittaluga, Judith A Ferry, et al.
Clinicopathologic Consensus Study of Gray Zone Lymphoma With Features Intermediate Between DLBCL and Classical HL
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The molecular pathogenesis of primary mediastinal large B-cell lymphoma
Blood. 2011 Sep 8;118(10):2659-69.

Clémentine Sarkozy, Thierry Molina, Hervé Ghesquières, et al.
Mediastinal Gray Zone Lymphoma: Clinico-Pathological Characteristics and Outcomes of 99 Patients From the Lymphoma Study Association
Haematologica. 2017 Jan;102(1):150-159.

 

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