びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL) 再発時の検査と治療方針 自家移植の有効性

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は初回治療だけで半数以上の症例が”完治”するとされますが、再発する可能性もあります。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の再発はCTなどの画像検査で疑われますが、再発の確定には「生検」してびまん性大細胞型B細胞リンパ腫細胞を確認することが必要です

再発が確認されたら、検査・治療へとすすんでいきます。

本項では、再発が確定したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する、治療前検査治療方針について解説します。大きな治療方針としては、自家造血幹細胞移植を行うことを前提として化学療法を行います。

自家造血幹細胞移植はどのくらい有効なのか、どのような症例に自家造血幹細胞移植を行うのか、以下解説します。

自家造血幹細胞移植を前提としますので、治療前PET-CT検査を行うことを推奨します。

本項でも、ガイドラインや医学文献を参照にしつつ記載しています。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 再発症例に対する自家移植の有効性

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)はR-CHOP療法やR-ACVBP療法による治療で完全奏効(CMR)に到達しても再発してしまうことがあります。

少ないですが最初から完全奏効(CMR)に到達しないこと(初発難治性)もあります。

限局期(ステージ1~2)で巨大病変がない場合は3年時点でおよそ10%以下の症例で再発・初発難治性があり得ます(Lancet. 2020 Dec 21;394(10216):2271-2281)。

進行期(ステージ3~4)や巨大病変がある場合は3年時点でおよそ10~30%の症例で再発・初発難治性があり得ます(Lancet. 2011 Nov 26;378(9806):1858-67, J Clin Oncol. 2014 Dec 10;32(35):3996-4003).

 

再発したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対しては、抗がん剤化学療法だけで治療するよりも自家造血幹細胞移植を組み合わせたほうが生存率が上昇することがわかっています。

自家造血幹細胞移植とは、一度投与したら血球が回復できないくらいの大量の抗がん剤投与を行った後に、自分の造血幹細胞を投与し血球を回復させる治療です。

自家造血幹細胞移植を行うには、事前に自分の造血幹細胞を採取して凍結保存しておきます。

 

リツキシマブ登場前になりますが、1995年に再発した中等度以上の悪性リンパ腫を対象としたランダム化臨床試験の結果が出版されています(N Engl J Med. 1995 Dec 7;333(23):1540-5).

再発後にDHAP療法という化学療法を行い、部分奏効以上の効果が確認できた症例を対象とし、その後の治療をDHAP継続もしくは自家造血幹細胞移植のどちらかにランダムに割り付けしました。

全奏効率は、DHAP継続群で44%, 自家造血幹細胞移植群で84%と、自家造血幹細胞移植群のほうが良好でした。

5年の時点で再発や増悪がなく生存している割合は、DHAP継続群で12%であったのに対して自家造血幹細胞移植群で46%と、自家造血幹細胞移植群のほうが明らかに良好でした(下図, p=0.001)。

再発悪性リンパ腫 DHAP vs 自家移植, EFS

 

5年全生存率は、DHAP継続群で32%であったのに対して自家造血幹細胞移植群で53%と、自家造血幹細胞移植群のほうが明らかに良好でした(下図, p=0.038)。

再発悪性リンパ腫 DHAP vs 自家移植, OS

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含むアグレッシブリンパ腫の再発症例に対して、DHAP療法に奏効が認められる場合、自家造血幹細胞移植も行ったほうが奏効、生存率ともに良好であると言えます。

 

このランダム化試験以降、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の再発症例では自家造血幹細胞移植を前提とした治療が行われるようになりました。

 

ただしこのランダム化試験の最初のDHAP療法で部分奏効以上を達成した症例は58%でした。部分奏効に到達しない症例では自家造血幹細胞移植はどうなのでしょうか?

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 化学療法の奏効と自家移植後の生存

再発後の化学療法で部分奏効に到達しない症例に対して、自家造血幹細胞移植のランダム化試験はありません。いくつかの臨床研究の結果があります。

 

たとえば1987年に報告された中等度以上の悪性リンパ腫を対象とした研究です(N Engl J Med. 1987 Jun 11;316(24):1493-8)。

化学療法に奏効後、自家造血幹細胞移植を行った症例の3年時点で完全奏効を達成したまま生存している割合36%でしたが、化学療法に奏効しない症例に自家造血幹細胞移植を行った症例では14%に低下しました。

なお、最初の治療に不応な症例の場合は、自家造血幹細胞移植を行っても3年時点で完全奏効を達成したまま生存している割合は0%でした。

 

この研究でも上記のランダム化試験でも、奏効の判断はCTによって行われています。PET-CTによる判定ではありません。

PET-CTによる判定ではどうなのでしょうか?

 

2015年に後ろ向き研究の結果が報告されています(Blood. 2015 Apr 16;125(16):2579-81).

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫再発症例で自家移植前にPET-CTで奏効をDeauville基準で判定した後ろ向き研究です。

Deauville点数1~3の完全奏効(CMR)症例と、Deauville点数が4かつ部分奏効(PMR)を達成した症例で比較しました。

結果、3年時点での無増悪生存率はDeauville点数1~3の症例では77%でしたが、Deauville点数が4の症例では49%であり、統計学的にも明らかにDeauville点数1~3の症例のほうがDeauville点数が4の症例よりも良好でした(下図, p<0.001)。

再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 移植前 Deauville 1-3 vs Deauville 4, PFS

3年全生存率は、Deauville点数1~3の症例では86%でしたが、Deauville点数が4の症例では54%であり、統計学的にも明らかにDeauville点数1~3の症例のほうがDeauville点数が4の症例よりも良好でした(下図, p<0.001)。

再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 移植前 Deauville 1-3 vs Deauville 4, OS

PET-CTの部分奏効(PMR)は、CTでの部分奏効よりも基準は甘いです。CTで部分奏効に到達しなくても、PET-CTで部分奏効に到達する可能性は十分にあります。

 

PET-CTで部分奏効(PMR)の場合の移植は、完全奏効(CMR)の場合よりも効果は低いといえます。

しかしながら、それでも3年無増悪生存率が約50%と考えられますので、化学療法だけで治療するよりも自家造血幹細胞移植を行ったほうがよいでしょう。

 

移植を前提とした化学療法の2サイクル目の最終投与日から約3週間後にPET-CT検査を行います。

3週間後のPET-CT検査では偽陽性になる場合があります。部分奏効(PMR)を確認できれば自家造血幹細胞移植へ進みます。完全奏効(CMR)に到達しているとなおよいでしょう。

 

化学療法数サイクル後にPET-CTで部分奏効(PMR)にさえも到達しない症例に対しては、自家造血幹細胞移植の効果も乏しいと言えます。

そのような症例では自家移植のほうが化学療法のみで治療するよりも良いとは言えません。「化学療法抵抗性」の判断となり、他の治療を検討していくことになります。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫で生検も行い再発が確定した症例に対しては、化学療法により奏効(PMR以上)が確認できれば、自家造血幹細胞移植まで行うことを推奨します

 

再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療開始前に行っておくこと

再発したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫は、再発が確定した時点で自家造血幹細胞移植を前提に治療開始前検査をすすめていきます

再発の確定には生検結果の確認が必要です。生検したらびまん性大細胞型B細胞リンパ腫ではない場合があります。生検したら悪性腫瘍ではなかったということもあり得ます。

 

生検で再発が確定したら、治療開始前の時点でのPET-CT検査が必要です。部分奏効(PMR)の判定には治療前の集積と化学療法後の集積を比較する必要があるからです。

その他、全身の臓器機能の状態を確認します。心臓超音波検査肺機能検査も行います。

 

自家造血幹細胞移植の適応の基準は施設や主治医によって異なりますが、一般的には、腎機能、心機能、肺機能、肝機能が良好で、きちんと歩くことができて、家族のサポートや、金銭面での問題のない症例が適応となります。

年齢の目安として65歳というのがありますが、実際には上限はありません。年齢そのものよりも全身状態によって適応は決定します。

 

治療開始前に自家造血幹細胞移植が可能な施設(できれば同種造血幹細胞移植も対応可能な施設)にセカンドオピニオンもしくは転院を検討することを推奨します。

さらに可能であればCAR-T療法にも対応可能な施設がよいでしょう。

 

化学療法に奏効するか抵抗性か。それによって方針が異なります。その結果がでた時点で慌てるよりも、治療開始前にどちらの場合も想定して対応できるようにしておくことが大切です。

 

移植を前提とした化学療法の2サイクル目の最終投与日から約3週間後にPET-CT検査を行います。その時点で部分奏効に到達していれば、幹細胞採取の予定を立てます。

幹細胞採取がすぐに可能であれば、そのまま幹細胞採取にすすみます。少し間があいてしまう場合は3サイクル目の化学療法を行い、その後に幹細胞採取を行います。

 

2020年8月時点でのアメリカのNCCNガイドライン(NCCN Guidelines)では、化学療法後に完全奏効(CMR)に到達した症例に対しては自家造血幹細胞移植を強く推奨しています(カテゴリー1)。年齢の制限はありません。

部分奏効(PMR)症例に対しては自家移植、CAR-T細胞療法、同種造血幹細胞移植を推奨しています。

部分奏効(PMR)にも到達しなかった症例に対しては自家移植を推奨していません。CAR-T細胞療法、化学療法のみ(新薬を含む)、緩和医療のみを推奨しています。

 

日本血液学会の2018年造血器腫瘍診療ガイドラインでは、「若年者(65歳以下)で救援療法に奏効(完全奏効+部分奏効)が認められる場合には,自家造血幹細胞移植併用大量化学療法を実施することが推奨される」としています。

部分奏効に到達しない場合は自家移植を推奨していません。「救援化学療法、緩和的放射線療法、best supportive care」としています。

 

まとめ びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 再発時の検査と治療方針 自家移植の有効性

● 再発したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対しては、抗がん剤化学療法に奏効する場合、化学療法だけで治療するよりも自家造血幹細胞移植も行ったほうが奏効、生存率ともに良好であると言えます。

PET-CTで部分奏効(PMR)の場合の移植は、完全奏効(CMR)の場合よりも効果は低いですが、それでも化学療法だけで治療するよりも自家造血幹細胞移植を行ったほうがよいでしょう。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の再発に対しては、化学療法により奏効(PMR以上)が確認できれば、自家造血幹細胞移植まで行うことを推奨します。

● 再発の確定には生検結果の確認が必要です。再発後の治療開始前の時点でのPET-CT検査を行うことを推奨します。自家移植を前提に検査・治療計画を立てていきましょう。

参考文献

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Four versus six cycles of CHOP chemotherapy in combination with six applications of rituximab in patients with aggressive B-cell lymphoma with favourable prognosis (FLYER): a randomised, phase 3, non-inferiority trial.
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Intensified Chemotherapy With ACVBP Plus Rituximab Versus Standard CHOP Plus Rituximab for the Treatment of Diffuse Large B-cell Lymphoma (LNH03-2B): An Open-Label Randomised Phase 3 Trial
Lancet. 2011 Nov 26;378(9806):1858-67.

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Young patients with non-germinal center B-cell-like diffuse large B-cell lymphoma benefit from intensified chemotherapy with ACVBP plus rituximab compared with CHOP plus rituximab: analysis of data from the Groupe d'Etudes des Lymphomes de l'Adulte/lymphoma study association phase III trial LNH 03-2B.
J Clin Oncol. 2014 Dec 10;32(35):3996-4003.

T Philip, C Guglielmi, A Hagenbeek, et al.
Autologous bone marrow transplantation as compared with salvage chemotherapy in relapses of chemotherapy-sensitive non-Hodgkin's lymphoma.
N Engl J Med. 1995 Dec 7;333(23):1540-5.

T Philip, J O Armitage, G Spitzer, et al.
High-dose therapy and autologous bone marrow transplantation after failure of conventional chemotherapy in adults with intermediate-grade or high-grade non-Hodgkin's lymphoma
N Engl J Med. 1987 Jun 11;316(24):1493-8.

Craig S Sauter, Matthew J Matasar, Jessica Meikle, et al.
Prognostic value of FDG-PET prior to autologous stem cell transplantation for relapsed and refractory diffuse large B-cell lymphoma.
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造血器腫瘍診療ガイドライン

NCCN Guidelines


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