再発・難治性の多発性骨髄腫(MM) 化学療法の副作用と注意点

2020-02-05

EPd療法 スケジュール

 

再発もしくは難治性となった多発性骨髄腫(MM)に対する化学療法は新薬が次々と登場しています。

本項では、再発・難治性の多発性骨髄腫に対して実際に化学療法を行うときの副作用や注意点について解説します。

どのような治療がどのような時によいのかについては、「再発・難治性の多発性骨髄腫 (MM) に対する化学療法」をご覧ください。

2021年3月時点で多いと考えられる、ボルテゾミブの使用歴がありレナリドミド維持療法を行っていた、という再発・難治症例への化学療法を対象に解説します。

できる限り高い効果を狙いつつ、有害事象は少なくなるように治療を行う参考にしてください。

本項で紹介している化学療法は、臨床試験に基づいて解説しています。臨床試験に参加している症例は比較的臓器機能が良好な症例であることにご留意ください。

 

再発・難治性の多発性骨髄腫に対するKD療法とその注意点

KD療法カルフィルゾミブ(商品名:カイプロリス)デキサメタゾンによる化学療法です。

過去にボルテゾミブ(商品名:ベルケイド)の使用歴がある症例では、ボルテゾミブで再治療するよりもカルフィルゾミブを用いたほうが効果が高いことがわかっています。

またレナリドミド維持療法後の再発では、レナリドミドを用いても効果がないだけでなく有害事象が増えるだけになるため、KRd療法よりもKD療法を行ったほうが良いです。

例えばVRd療法を行って(自家移植後に)Rd維持療法を行った場合などはこの状況にあたります。

KD療法を行う場合は高用量で週1回投与とするほうが、通常量週2回投与するよりも通院の負担は少ないです。効果も低下しません(Lancet Oncol. 2018 Jul;19(7):953-964)。

臨床試験では再発するまでずっとKD療法を継続しています。実際にKD療法で再発するまでずっと使用していることも多いです。その場合はなおさら週1回の方がよいでしょう。

KD療法は奏効が早く、1~2コース終了した時点で奏効がみられることが多いです。

 

KD療法の投与スケジュールは以下のようになります。

KD療法 スケジュール

1サイクルは28日間です。4週目(22日目)のカルフィルゾミブの投与はありません。

肝機能が低下している場合は、カルフィルゾミブの減量を行います。

多発性骨髄腫細胞が多いと、カルフィルゾミブにより腫瘍細胞が一気に壊れて、電解質異常・腎機能障害などを起こすことがあります。「腫瘍崩壊症候群」といいます。

KD療法を開始する48時間前から十分に水分を摂取して下さい。初回のカルフィルゾミブ投与時には生理食塩水の点滴も行います。「腫瘍崩壊症候群」が強く懸念される場合は、もっと多くの点滴を行います。適切に予防しないと生命にかかることがまれにあります。

 

KD療法では、ボルテゾミブと同様に帯状疱疹を発症しやすいため、アシクロビルもしくはバラシクロビルで予防内服を行うことを推奨します。

KD療法では胃炎も起こりやすくなるため、胃薬であるプロトンポンプ阻害薬を併用します。

レナリドミドなどを使用していなくてもKD療法だけで血栓症が起こりやすくなるため、血栓症を予防する薬剤も内服することがあります。

まれですがカルフィルゾミブの投与時に「輸注反応」といって、発熱、悪寒、息切れなどがおこることがあります。起こる場合は初回が多いです。

 

KD療法では急性腎機能障害を起こすことがあります。血液中の「クレアチニン」が倍くらいに上昇するようなら休薬が必要です。

急性腎機能障害は自覚症状があまりなく、採血でわかるという場合が多いです。

減量を何度も行っても急性腎機能障害を起こすのであれば中止です。

 

KD療法には心毒性があります。もともと心機能が低下しているときは慎重に継続してください

息切れ、浮腫、胸部症状などに注意してください。

定期的な心電図検査や心機能検査を行うことを推奨します。

血圧が大きく上昇することもあります。

 

血球が減少することがあります。白血球については「好中球数」が大きく低下したら休薬です。

血小板も減少しやすく、大きく低下したら休薬にしてください。

 

KD療法でも感染症にかかりやすくなります。発熱したら早めに医療機関を受診してください。肺炎などが重症化することもときどきあります。初発時と同様に予防の抗生剤内服を行うことがあります。

また、B型肝炎の再活性化がおこることがあります。過去のB型肝炎の既往が採血結果で確認できる場合は定期的なウイルス量チェックが必要です。

 

ボルテゾミブとレナリドミドの使用歴がある再発・難治性の多発性骨髄腫に対するKD療法は、部分奏効達成率で約60%です。最良部分奏効達成率は約35%、完全奏効率は約5~10%です。

ボルテゾミブとレナリドミドに不応になっているとさらに奏効は低下します。

再発後の治療は初回治療と比べると奏効は低下する傾向にありますので、各サイクルで奏効を必ず確認してください。

 

再発・難治性の多発性骨髄腫に対するEPd療法とその注意点

EPd療法エロツズマブ(商品名:エムプリシティ)ポマリドミド(商品名:ポマリスト)デキサメタゾンによる治療です。

ボルテゾミブとレナリドミドの両方に不応となった症例に対しても有効性が高いことがわかっています。

KD療法の臨床試験ではこのような症例はあまり多くはありませんでしたが、EPdの臨床試験では約70%の症例でボルテゾミブとレナリドミドの両方に不応でした。2021年3月時点で使用可能な薬剤では、このような症例に対してはEPd療法、イサツキシマブ+Pd療法、もしくはDKd療法が最も有効な治療と言えます(N Engl J Med. 2018 Nov 8;379(19):1811-1822)。

 

EPd療法のスケジュールは以下のようになります。

EPd療法 スケジュール

EPd療法の1サイクルは28日です。

エロツズマブは最初の2サイクルは毎週の投与です。3サイクル目からエロツズマブは月1回の投与になります。

ポマリドミドは3週間内服し、1週間休薬します。デキサメタゾンの内服は週1回です。

開始前やサイクルの最初に白血球や血小板が著しく少ない場合はポマリドミドは使用できません。

 

透析を行っている場合はポマリドミドを減量します。

肝機能が大きく低下している場合もポマリドミドを減量します。

ポマリドミドの飲み忘れに気が付いたときは、予定時間の12時間以内であればすぐに内服し、以降も予定時間に内服してください。12時間を超えていたら、その日は内服せずに以降の予定時間に内服してください。

帯状疱疹予防の内服、胃炎予防の内服はKD療法と同様に行います。

ポマリドミドは静脈血栓症、肺血栓塞栓症、心筋梗塞、脳梗塞などを起こしやすくしますので、血栓症予防の内服が必須です。

エロツズマブの初回投与時に、「輸注反応」を起こすことがありますが、頻度は低く、多くは軽度です。

KD療法と同様、EPd療法初回に「腫瘍崩壊症候群」を起こす可能性があります。腫瘍が多いことが想定される場合は点滴を多めに行います。

ポマリドミドは催奇形性があります。妊婦の内服は絶対に避けてください。また、ポマリドミド内服中は男性も女性も確実に避妊してください。

 

ポマリドミドはレナリドミドと同系統の「免疫調節薬」になります。長期の内服により二次発がんを起こしやすくなる可能性があります。

ポマリドミドは、眠剤や麻薬とは相性が悪く、同時使用により眠気や倦怠感やせん妄を起こしやすくなります。できる限り併用は避けてください。

 

EPd療法も臨床試験では再発するまでずっと継続しています。3サイクル以降は月1回になるため、維持療法としても通院の負担は少ないです。Pd療法のみで維持療法を行うよりもEPd療法として維持療法継続することを推奨します。

 

EPd療法でも血球が低下します。またEPd療法により肝障害を起こすことがあります。これらは症状はほとんどなく、多くの場合採血でわかります。著しい場合は休薬や減量を行います。

ポマリドミドによる発疹がおきるときがあります。内服し始めて10日前後くらいから発生することが多いため注意してください。もし重篤化する場合は直ちに服薬中止です。

 

KD療法と同様に感染症には注意が必要です。発熱したら早めに医療機関を受診して下さい。B型肝炎の再活性化にも注意してください。

 

ボルテゾミブとレナリドミドに不応となっていても、EPd療法だけで部分奏効達成率は約50%, 最良部分奏効達成率は約20%となります。このような症例では比較的高い奏効と言えますが、十分とまではいきません。

EPd療法はKD療法よりも奏効までの時間がかかり、2~3サイクルを終えて奏効がみられてくることが多いです。他の化学療法と同様に各サイクルで奏効を必ず確認してください。

 

注意点としてエロツズマブは単独での奏効は乏しいため、ポマリドミドに不応となってしまった症例に対してEPd療法を行っても臨床試験と同等の効果がでるとは言えません。

基礎研究では免疫調節薬による免疫賦活効果で奏効が上昇することが示唆されていますが、臨床試験では全く証明されていません

ポマリドミド内服による副作用はある程度生じることが想定されます。免疫賦活効果については不明であるため、エロツズマブだけで治療するよりもよいとは必ずしも言えません。

ポマリドミドに不応な場合は、有効性が証明されている別の治療をまずは優先したほうがよいでしょう。

 

再発・難治性の多発性骨髄腫に対するダラツムマブの使用とその注意点

2021年3月時点で使用可能な抗CD38抗体薬ダラツムマブ(商品名:ダラザレックス・ダラキューロ)イサツキシマブ(商品名:サークリサ)です。

イサツキシマブ+Pd療法については「再発・難治性の多発性骨髄腫に対するイサツキシマブ+Pd療法」をご覧ください。

再発・難治性の多発性骨髄腫に対するダラツムマブを含めた治療で効果が確認されているのは、DVD(ダラツムマブ・ボルテゾミブ・デキサメタゾン)療法DRd(ダラツムマブ・レナリドミド・デキサメタゾン)療法、そしてDKd(ダラツムマブ・カルフィルゾミブ・デキサメタゾン)療法です。

 

レナリドミドに不応となっていない場合はDRd療法が維持療法も兼ねて行うため選択されることが多いです。無増悪生存期間が維持療法により延長します。

レナリドミドに不応でもボルテゾミブに不応でなければDVD療法が選択できますが、ボルテゾミブ使用歴がある症例ではDKd療法のほうが効果は高いでしょう

 

ダラツムマブはエロツズマブと同様に単独での奏効は乏しいため、DRd療法をレナリドミド不応症例に行ったとしても臨床試験と同等の効果がでるとは言えません。

ダラツムマブでも基礎研究では免疫調節薬による効果で奏効が上昇することが示唆されていますが、臨床試験ではやはり全く証明されていません

レナリドミドの副作用はある程度生じることが想定されますが、その相乗効果については臨床的に不明であるため、ダラツムマブだけで治療するよりよいとは言えません。

そしてダラツムマブの場合はPd療法と合わせた場合の比較試験の結果もなく、DPd療法としても医学的根拠のある治療とは言えません。

効くかどうかよくわかっていない治療よりも効くとわかっている治療からまずは優先して行うことを推奨します。

 

DRd療法のスケジュールは以下のようになります(N Engl J Med. 2016 Oct 6;375(14):1319-1331)。

DRd療法 スケジュール

DRd療法の1サイクルは28日間です。

ダラツムマブについては、1~2サイクルは毎週3~6サイクルは2週間に一回7サイクル以降は月に1回となります。

レナリドミドは21日間内服し7日間休薬します。

デキサメタゾンはダラツムマブ投与日その翌日に投与します。初回ダラツムマブ投与時には点滴投与のほうが輸注反応を起こしにくいです。

ダラツムマブは輸注反応を翌日にも起こすことがあるため、デキサメタゾンは投与日翌日にも内服します。

初回ダラツムマブの輸注反応は約50%の症例でみられます。震えや発熱、鼻閉感、咳、嘔吐などが起こりやすいです。しかしながら重症な輸注反応が出ることはまれです。

輸注反応は初回が最も多いため初回はゆっくりと6時間以上かけて投与します。

 

腎機能が低下している場合はレナリドミドの減量が必要です。

EPd療法と同様に、帯状疱疹の予防、血栓症の予防、胃炎の予防も行います。

ポマリドミドと同様レナリドミドでも飲み忘れに気が付いたときは、予定時間の12時間以内であればすぐに内服し、以降も予定時間に内服してください。12時間を超えていたら、その日は内服せずに以降の予定時間に内服してください。

専門的な内容になりますが、CD38は赤血球にも発現しておりダラツムマブの投与の影響で間接クームス試験が陽性化します。ダラツムマブを始める前に間接クームス試験を確認しておきます。

 

EPd療法と同様、初回に「腫瘍崩壊症候群」を起こす可能性があります。腫瘍が多いことが想定される場合は点滴を多めに行います。

レナリドミドは催奇形性があります。妊婦の内服は絶対に避けてください。レナリドミド内服中は男性も女性も確実に避妊してください。

レナリドミドの長期の内服により二次発がんを起こしやすくなります。

レナリドミドでも発疹がでることがあります。

これも専門的な内容ですがレナリドミドの使用により、甲状腺機能に異常がみられることがあります。定期的に採血で甲状腺機能を確認します。

 

DRd療法でも血球が低下します。大きく低下したら休薬です。

DRd療法では感染症をよく起こします。発熱したら早めに医療機関を受診して下さい。B型肝炎の再活性化にも注意してください。

 

ダラツムマブは点滴投与ではなく皮下注射で行うことが2021年3月に承認され可能になりました(商品名:ダラキューロ).

皮下注射にすると点滴投与と比べて奏効の差はみられませんが、投与時間は3~5分程度に大幅に短縮されます。輸注反応率も減少します。病院滞在時間も大きく短縮できます。

ダラツムマブの投与方法について大規模ランダム化臨床試験が行われました(Lancet Haematol. 2020 Mar 23).

COLUMBA試験と名付けられたこの試験では、再発・難治性の多発性骨髄腫症例を対象にダラツムマブ点滴投与群皮下注射群で比較しました。いずれの群も単剤での投与です。

結果、全奏効率は点滴群で37%, 皮下注射群で41%でした。最良部分奏効の達成率は点滴群で17%, 皮下注射群で19%でした。奏効率に統計学的な差はありませんでした。

無増悪生存期間は中央値で点滴群で6.1か月, 皮下注射群で5.6か月でした(下図)。統計学的な差はありませんでした。

多発性骨髄腫 ダラツムマブ 皮下注射 vs 点滴静注 PFS

全生存率もこの時点では統計学的な差はありませんでした(下図)。

多発性骨髄腫 ダラツムマブ 皮下注射 vs 点滴静注 OS

重症な輸注反応は点滴静注群で5%でしたが、皮下注射群では2%でした。

輸注反応が発生するまでの時間は、点滴静注群で1.5時間でしたが皮下注射群では3.4時間でした。

この試験の奏効率や無増悪生存率が比較的低いのはダラツムマブが単剤投与であるためでしょう。

 

イサツキシマブ+Pd療法については次項で解説します。

イサツキシマブ・ポマリドミド・デキサメタゾン療法 1サイクル目
再発・難治性の多発性骨髄腫に対するイサツキシマブ+Pd療法

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まとめ 再発・難治性の多発性骨髄腫 化学療法の副作用と注意点

KD療法を行う場合は、高用量で週1回投与のほうが利便性が高いです。

EPd療法はボルテゾミブとレナリドミドの両方に不応な症例に対して最も有効と言えます。

● 抗CD38抗体薬であるダラツムマブは、レナリドミドに不応となっていない場合にDRd療法として選択されることが多いです。

参考文献

Moreau P, Mateos MV, Berenson JR, et al.
Once weekly versus twice weekly carfilzomib dosing in patients with relapsed and refractory multiple myeloma (A.R.R.O.W.): interim analysis results of a randomised, phase 3 study.
Lancet Oncol. 2018 Jul;19(7):953-964.

Dimopoulos MA, Dytfeld D, Grosicki S, et al.
Elotuzumab plus Pomalidomide and Dexamethasone for Multiple Myeloma.
N Engl J Med. 2018 Nov 8;379(19):1811-1822.

Dimopoulos MA, Oriol A, Nahi H, et al.
Daratumumab, Lenalidomide, and Dexamethasone for Multiple Myeloma.
N Engl J Med. 2016 Oct 6;375(14):1319-1331.

Mateos MV, Nahi H, Legiec W, et al.
Subcutaneous versus intravenous daratumumab in patients with relapsed or refractory multiple myeloma (COLUMBA): a multicentre, open-label, non-inferiority, randomised, phase 3 trial.
Lancet Haematol. 2020 Mar 23. pii: S2352-3026(20)30070-3. doi: 10.1016/S2352-3026(20)30070-3.

 

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