再発もしくは難治性の急性骨髄性白血病(AML)の治療

2019-11-22

急性骨髄性白血病 骨髄生検 HE200

 

急性骨髄性白血病(AML)は完治も可能ですが、再発も少なくありません。再発は治療終了後最初の数年以内に多いです。

本項では再発した急性骨髄性白血病もしくは難治性の急性骨髄性白血病の治療について解説します。

同種造血幹細胞移植を行っていないのであれば、治療は同種造血幹細胞移植を前提としたものとなります。細胞の型(HLA)が一致する兄弟姉妹や、骨髄バンクドナーだけでなく、半合致移植なども選択肢に含まれます。

その他にも新しい薬剤が次々と登場しています。移植適応外もしくは移植後再発の場合は、これらの治療も検討していくことになります。

どのような場合にどのようながよいのか、国内・国外の文献やガイドラインを参照しつつ解説していきます。

 

急性骨髄性白血病 再発・難治性の基準 同種造血幹細胞移植

再発および難治性の急性骨髄性白血病の定義 ELN2017

急性骨髄性白血病(AML)の治療として寛解導入療法2回行っても、完全寛解(CR)もしくは血球数の回復が不完全な完全寛解(CRi)に到達しなかった場合、「難治性急性骨髄性白血病」と定義されます

「難治性急性骨髄性白血病」は寛解導入療法を2回適切に行ったにもかかわらず、白血病細胞が残存している状態なので、抗がん剤化学療法が無効と言えます。急性骨髄性白血病のなかでも特に悪いタイプです

 

完全寛解(CR)もしくは血球数の回復が不完全な完全寛解(CRi)に一度到達してから、その後採血検査で白血病細胞が検出されるようになった骨髄中に急性骨髄性白血病細胞(芽球)が5%以上になった体のどこかに急性骨髄性白血病細胞の塊(骨髄肉腫)が発生した、といった場合は「再発急性骨髄性白血病」となります。

したがって再発が疑われた時点で、骨髄検査CT検査を行います。

 

これらの基準は、2020年12月時点で最新の国際基準である「2017 ELN基準」に基づきます(上図 Blood. 2017 Jan 26;129(4):424-447)。

再発の場合は、治療開始前に心臓超音波検査を行います。再度寛解導入療法を行うためです。

 

難治性の急性骨髄性白血病の場合は、同種造血幹細胞移植を行うことを推奨します

大規模ランダム化臨床試験の難治性の急性骨髄性白血病症例の事後解析が報告されています(Biol Blood Marrow Transplant. 2015 Mar;21(3):559-64)。

この臨床試験で難治性急性骨髄性白血病だった症例の観察を継続した結果、同種造血幹細胞移植を行った症例は、行わなかった症例と比べて、圧倒的に全生存率が高いという結果でした。

4年生存率は同種造血幹細胞移植症例で48%, 移植しなかった症例で4%でした(下図)。

難治性の急性骨髄性白血病 移植有無別全生存

臨床試験の事後解析は、もともとの評価項目以外の解析結果になりますので、信頼性はやや低下します。難治性の急性骨髄性白血病のみを対象とした大規模ランダム化臨床試験はありません。

難治性急性骨髄性白血病に対しては抗がん剤化学療法が無効なので、早めに同種造血幹細胞移植を行ったほうがよいと考えられます

 

では、再発した急性骨髄性白血病に対する同種造血幹細胞移植はどうでしょうか?

別の3つの大規模ランダム化臨床試験の事後解析の結果です(J Clin Oncol. 2013 Apr 1;31(10):1293-301)。

初回治療(寛解導入療法+寛解後化学療法)で同種造血幹細胞移植を行わず、再発した症例を解析しています。

再発後に再び寛解導入療法を行い完全寛解に到達した症例に対して、同種造血幹細胞移植を行った症例と行わなかった症例について解析しています。

結果は同種造血幹細胞移植を行った症例のほうが、移植しなかった症例よりも生存期間は良好でした(下図)。この差は「予後中間群」で顕著でした。

再発急性骨髄性白血病 同種移植有無別生存

抗がん剤化学療法のみで治療し再発した急性骨髄性白血病に対して、再び抗がん剤化学療法のみで治療しても長期的な生存が得られる可能性は低いです。そのような場合は同種造血幹細胞移植を推奨します

寛解導入療法を再度行いある程度白血病細胞を減らした状態で同種移植を行います。

 

再発・難治性の急性骨髄性白血病に対する同種造血幹細胞移植は、HLA一致の兄弟姉妹アリル8/8一致の骨髄バンクドナーからの同種移植だけでなく、半合致移植臍帯血移植アリル6-7/8一致の骨髄バンクドナーも含めた同種造血幹細胞移植も検討します。

HLA一致の兄弟姉妹が最も生存率が高く、次にアリル8/8一致の骨髄バンクドナーが生存率が高いです。

半合致移植や臍帯血移植、アリル6-7/8一致の骨髄バンクドナーの中では、半合致移植を移植後シクロホスファミドを用いておこなうのがよいと考えられます。

 

同種造血幹細胞移植の適応は施設・担当医師によって異なります。単純に年齢だけで移植の可否を決めてはいけません。全身の臓器状態などを基準に決めていきます。

セカンドオピニオンや転院を行う際は、可能であれば治療を開始する前に行ってください。全身状態が悪くなってからでは、セカンドオピニオンや転院を行っても、可能な治療の選択肢がほとんどないという状態になりかねません。

 

急性骨髄性白血病に対する同種造血幹細胞移植後に再発した場合

急性骨髄性白血病に対して同種造血幹細胞移植を行ったにもかかわらず、再発してしまった場合は、かなり厳しい状態と言わざるを得ません。

治療の選択肢としては、ドナーリンパ球輸注再同種造血幹細胞移植新しい薬剤となります。

後ろ向き研究の結果しかありませんが、ドナーリンパ球輸注や再同種造血幹細胞移植について検討されています。

 

2007年に報告された比較的大規模な後ろ向き研究の結果です(J Clin Oncol. 2007 Nov 1;25(31):4938-45)。

同種造血幹細胞移植後に再発した急性骨髄性白血病症例に対して、移植ドナーからリンパ球を採取し投与する治療である「ドナーリンパ球輸注」を行った症例と行わなかった症例の予後を比較しました。

結果は、ドナーリンパ球輸注を行った症例のほうが生存率は明らかに良好でしたが、2年生存率はドナーリンパ球輸注を行った症例は21%, 行わなかった症例は9%と、どちらも決して高いわけではありませんでした(下図)。ドナーリンパ球輸注による完全寛解は34%でした。

移植後再発急性骨髄性白血病 ドナーリンパ球輸注 全生存

もしドナーリンパ球輸注を急性骨髄性白血病に対して行う場合は、抗がん剤化学療法で白血病細胞を減らしてからドナーリンパ球輸注を行ったほうが効果は高いと考えられます。

 

再発後に再び同種造血幹細胞移植を行った症例について、比較的大規模な後ろ向き研究の結果が2013年に報告されています(J Clin Oncol. 2013 Sep 10;31(26):3259-71)。

再移植後の2年生存率は25%と高くはありませんでした(下図)。完全寛解率は74%でした。

1回目と2回目の移植ドナーについては、同じドナーでも違うドナーでも生存期間は変わりありませんでした。

また、1回目の同種造血幹細胞移植から6か月以内の早期再発症例は極めて予後不良でした。

再発急性骨髄性白血病 再移植 生存

 

どちらも後ろ向き研究の結果ですが、移植後再発症例に対しては、ドナーリンパ球輸注も再移植も長期的な生存を獲得する可能性はあまり高くありません。

とくに2回目の移植は免疫抑制剤を減量して行うため、GVHDが起こりやすくなります。治療毒性は1回目よりも高いです。

また、2回目の移植のときにドナーを変更する必要はありません(Blood Cancer J. 2019 Nov 18;9(12):88.)。2019年の比較的大規模な後ろ向き研究でもドナー変更をしてもしなくても成績は変わりありませんでした(下図)。異なるドナーにすることに執着し、ミスマッチドナーなどを選ぶと移植後の成績がかえって悪化します。

急性骨髄性白血病 再移植 ドナー変更の有無別全生存

 

同種造血幹細胞移植後に再発した場合は、可能であれば下記の薬剤のほうが良いかもしれません。

 

再発・難治性の急性骨髄性白血病 新規薬剤について

急性骨髄性白血病に対する新薬は毎年のように開発されています。

 

IDHという遺伝子の変異を獲得した急性骨髄性白血病に対して、前向きの臨床試験が行われました。

IvosidenibEnasidenibという薬剤です。それぞれIDH1IDH2のいずれかが変異している再発・難治性の症例が対象となりました(N Engl J Med. 2018 Jun 21;378(25):2386-2398, Blood. 2017 Aug 10;130(6):722-731)。

いずれも単剤投与でCRもしくはCRiに約30%で到達しています。

この結果からアメリカでは両薬剤は承認され使用可能になっています。

2020年12月時点で日本では未承認です。

 

FLT3という遺伝子の変異(ITD, TKD)を獲得した急性骨髄性白血病に対して、大規模ランダム化臨床試験が行われ、2019年にその結果が出版されました(N Engl J Med. 2019 Oct 31;381(18):1728-1740)。

再発・難治性の急性骨髄性白血病を対象としたこの臨床試験では「ギルテリチニブ」「抗がん剤化学療法」を比較しました。

結果、CRもしくはCRiに到達した症例は、ギルテリチニブ群で約30%, 抗がん剤化学療法群で約15%と、明らかにギルテリチニブ群のほうが良好でした。

全生存期間も明らかに改善し、中央値でギルテリチニブ群で9.3か月、抗がん剤化学療法群で5.6か月と、1.7倍に延長しました(下図)。

ギルテリチニブ vs 化学療法 全生存

FLT3遺伝子変異がある再発・難治性の急性骨髄性白血病に対してはギルテリチニブ(商品名:ゾスパタ)の使用を推奨します。

 

FLT3変異を対象とした同様の大規模ランダム化臨床試験にキザルチニブ(商品名:ヴァンフリタ)と抗がん剤化学療法を比較した試験があります(Lancet Oncol. 2019 Jul;20(7):984-997.)

この臨床試験でも、キザルチニブ群の生存期間が中央値で6.2か月、抗がん剤化学療法では4.7か月と、統計学的にも明らかにキザルチニブ群のほうが良好でしたが、化学療法群の23%が実際に治療をしていませんでした

この結果から、アメリカやEUではキザルチニブの承認はされませんでした。データは同じですが日本では承認されています。

 

2020年12月時点でのアメリカのNCCNガイドライン(NCCN Guidelines)では、FLT3遺伝子変異がある再発・難治性の急性骨髄性白血病に対して、ギルテリチニブを強く(カテゴリー1)推奨しています。IDH変異があればIvosidenibとEnasidenibも推奨されています。キザルチニブは推奨に入っていません。

日本の2018年造血器腫瘍診療ガイドラインでは、これらの新薬については特に言及されていません。

 

まとめ 再発もしくは難治性の急性骨髄性白血病の治療

● 再発・難治性の基準は「2017 ELN基準」に基づきます。再発・難治性の急性骨髄性白血病に対しては、同種造血幹細胞移植がまだであれば、同種造血幹細胞移植を早めに行うことを推奨します。

● 急性骨髄性白血病に対して同種造血幹細胞移植を行ったにもかかわらず、再発してしまった場合は、かなり厳しい状態と言わざるを得ません。ドナーリンパ球輸注、再同種造血幹細胞移植、薬物治療が選択肢になります。

● IDHやFLT3といった遺伝子の変異を獲得した急性骨髄性白血病に対しては、新薬を用いた治療を推奨します。

参考文献

Diagnosis and management of AML in adults: 2017 ELN recommendations from an international expert panel.
Blood. 2017 Jan 26;129(4):424-447.

Fate of patients with newly diagnosed acute myeloid leukemia who fail primary induction therapy.
Biol Blood Marrow Transplant. 2015 Mar;21(3):559-64.

Curability of patients with acute myeloid leukemia who did not undergo transplantation in first remission.
J Clin Oncol. 2013 Apr 1;31(10):1293-301.

Donor lymphocyte infusion in the treatment of first hematological relapse after allogeneic stem-cell transplantation in adults with acute myeloid leukemia: a retrospective risk factors analysis and comparison with other strategies by the EBMT Acute Leukemia Working Party.
J Clin Oncol. 2007 Nov 1;25(31):4938-45.

Second allograft for hematologic relapse of acute leukemia after first allogeneic stem-cell transplantation from related and unrelated donors: the role of donor change.
J Clin Oncol. 2013 Sep 10;31(26):3259-71.

Donor selection for a second allogeneic stem cell transplantation in AML patients relapsing after a first transplant: a study of the Acute Leukemia Working Party of EBMT.
Blood Cancer J. 2019 Nov 18;9(12):88.

Durable Remissions with Ivosidenib in IDH1-Mutated Relapsed or Refractory AML.
N Engl J Med. 2018 Jun 21;378(25):2386-2398.

Enasidenib in mutant IDH2 relapsed or refractory acute myeloid leukemia.
Blood. 2017 Aug 10;130(6):722-731.

Gilteritinib or Chemotherapy for Relapsed or Refractory FLT3-Mutated AML.
N Engl J Med. 2019 Oct 31;381(18):1728-1740.

Quizartinib versus salvage chemotherapy in relapsed or refractory FLT3-ITD acute myeloid leukaemia (QuANTUM-R): a multicentre, randomised, controlled, open-label, phase 3 trial.
Lancet Oncol. 2019 Jul;20(7):984-997.

NCCNガイドライン(NCCN Guidelines)

2018年造血器腫瘍診療ガイドライン

 

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